読書

2017/09/20

「戦場体験」を受け継ぐということ

51rwwzbq6ll_sx343_bo1204203200_ 3年ほど前の本だけど、ふたたびじっくり読んでみた。著者の経歴がおもしろい。日航の元客室乗務員。その職場でのかかわりから、ビルマでの戦争の体験者と知り合い、過酷な戦場体験をもつ人たちによりそっていくことになる。こういう人たちから信頼を得て、きちんと聞き取るという仕事はとても大事だと思う。
 中国・ビルマ国境の戦争は、ほんとうに過酷だったと聞く。ボクはかつて、西野さんの「慰安婦」の本で知ったのが最初かな。その過酷さは、まず、補給のない日本軍のありようからくる、加害の行為として、住民の体験ということからうきぼりになるのだと思う。そのうえで、孤立する中で、ほんとうに過酷な全滅戦をたたかった人々。そして生き残った人々の人生からもいろいろ考えさせられる。たんに「靖国」にまいる人といっても、そこにある葛藤や思いと言うのは一様ではないし、いろいろ向き合わなければならないことがあると考えさせられるのだ。それが兵士の体験であり、日本の平和意識の一断面なのだから。襟をただして、考えなければならない、歴史がそこにはある。


保育園を呼ぶ声が聞こえる

512drrjlfol_sx343_bo1204203200__1 読みましたよ! うーん、なかなか衝撃的。待機児の問題の裏側で進む保育政策が、ここまで、子どもをふみにじったものであるのか、絶望的になる。ちょうど、障害児の問題について、いろいろ調べていたのだけど、かなりユニバーサルな政策だと言える保育で、こんな状況で、どうさまざまな課題に向き合っていくのかを考えると、ほんとうに絶望的になる。誰もが、おかしいと声をあげる、人権について、もっと語れる社会になるにはでしたらいいのか。
 だけど、まあ、ブレイディさんも猪熊さんも、基本、イギリス労働党への評価は甘い感じ? とりわけOfSTEDに対してはなあ。だけど、実は、激しい競争にさらされて、そういう面でも公正さが建前としてもとめられている社会を前提に、ならば、その評価制度は、できるだけいいものにということか。そういう意味で、外国との比較は難しいし、日本の特殊性と思っていたことが、実はちょっとちがったりなどなど、いろいろ考えさせられるわけで。
 やっぱり、大事なのは、対抗軸について、考えたり、発信したり、ちょっとでも合意をひろげていくような議論をどう積み重ねていくかということで、いろいろ考えないとなあ。


2017/09/12

保育と憲法: 個人の尊厳ってこれだ!

13 たしかに面白かったなあ。平松ワールド全開!! 川口さんとは2度会ったことがある。一度はあいさつ、二度めはじっくり。名古屋イラク訴訟の勝訴で有名だけど、なかなか面白い人。子育てを大事にして、会議なども子育て優先。できるだけ昼にして、それでもダメなときは、相方さんと調整して。相方さんも有名な弁護士さんだし。ボクがあったのも、夜の八時以降で、まず保育園のお迎えをして、子どもの相手をして、相方さんとバトンタッチしてからの時間だった。そういう人なかなか面白い。
 本書は、憲法を軸にしながた、保育の現実を照らす。まずは保育指針の改定問題。ほんとうに、子どもの、その内部にある力を引き出し、発達させる形のものとするんではなく、そとから子どもを形にはめるものになっていないかということが、日々の葛藤のなかでの平松さんたちの実践から問いかける。それから、保育をとりまく政策状況。待機児や親の雇用の問題、どれだけ、人権が踏みにふみにじられているのかがわかる。切ないぐらい、強い怒りがわく。
 それだけに、不満が二点。一点は、川口さんの憲法理解に関わる問題。これは、憲法の方法論でもあるのだけど、個人の尊厳というものをどうとらえるのか? これだけふみにじられた人権状況を考えるとき、キーワードはほんとうに個人の尊厳なのか。ボクも個人の尊重(尊厳)の意義は重要だとは思うけど。いまの人権状況は、もっと抽象化された人間として尊厳が聞きになるということではないのか? まあ、これは尊厳を踏みにじる階級社会をどう捉えるかという問題で、川口さんにはちょっと申し訳ない話、まったく理屈の問題で、言いたいことは同意するのだけおdね。
 もう一つは、平松さんの語り。これはライターの問題なのだと思うのだけど、ちょっと堅い感じがする。共感をベースとするような平松さんの語りの力がもう一つ、そがれている残念があるのだけど。


2017/08/03

『法政大学と出陣学徒』 「負の歴史」率直に認め 5年間の検証、報告書に

 これはしっかり読んでみたいなあ。

『法政大学と出陣学徒』 「負の歴史」率直に認め 5年間の検証、報告書に(毎日新聞)  第二次世界大戦下に徴兵された学生らを詳細に調査した『法政大学と出陣学徒』が刊行された。同大学が5年間にわたって進めてきた「法政大学と出陣学徒」プロジェクトの事業報告書を上下2巻で刊行するもので、本巻は上巻だ。長く「負の歴史」と向き合わなかった事実を率直に認めつつ、近年、精力的に調査を進めてきた成果を報告している。    ■  ■  A4判で300ページ近い大著。出陣の実態に迫り、さらに戦後、大学がその事実にどう向き合ってきたのかを検証している。  同大学は3000人以上の学生を戦地に送り出した。本来大学を挙げてその事実を検証し、歴史にきざむべきところだ。だが多くの他大学同様、それが進まなかった。たとえば1961年刊行の『八十年史』、80年の『百年史』で学徒出陣に触れたのはほんの数行だ。「大学史の上で『学徒出陣』という出来事はこれまで正面から取り上げられ語られることはなく、その時代の歴史はほとんど空白のままであった」(調査を実施した同大学史委員会委員長の馬場憲一教授による序文)  調査に当たった、総長室専門嘱託の古俣達郎さんは「当時は大学の創立の経緯が明らかでなかったので、その解明に力点が置かれた」とし、馬場教授は「戦時中に在籍した教員がまだいて、学徒出陣にはあまり触れたくなかったのでは」と話す。戦時下の諸書類がほとんど残っていない、という事情もあった。  そうした中で特筆すべきは90年、学徒出陣し戻らなかった学生に「卒業証書」を交付したことだ。出征学徒を調査し、学徒35人の戦没を確認した。同年3月の卒業式では、阿利莫二総長(当時)が遺族10人に卒業証を授与した。阿利総長は自身が学徒出陣したこともあり、出陣の検証と追悼に積極的だった。大学の責任にも言及した。だが、本格的な追跡調査は継続されなかった。  同プロジェクトは2012年度に始まった。戦後70年を前に、当事者にまとまった調査をする「最後の機会」ととらえてのことだったという。その結果、1943年10月に公布された「在学徴集延期臨時特例」で、兵役法で認められた在学中の徴集猶予が停止となり、同年12月に男性学徒が出陣した狭義の「学徒出陣」では1476人が、また同12月以降の在学中出陣全体を示した中義の出陣が3395人に上ることが分かった。41年から行われた、繰り上げ卒業から即時出征となった学徒を含む広義の出陣については不明という。  さらに学徒出陣した可能性のある44~48年度の卒業生985人を対象にアンケート調査を実施し、148人の回答を得た。学内の資料では把握しにくかった徴兵後の状況を確認できたことや、新たな戦没者情報がもたらされるなど、大きな成果があった。また展示会やシンポジウムなど、学外へも積極的に発信した。本書にはこうした成果も記されている。    ■  ■  さらに目をひくのが、戦没者694人の名簿だ。日中戦争から太平洋戦争までの戦争で亡くなった卒業生と在学生で、卒業年月や本籍、学部学科、戦没した年月日や場所なども記されている。交友名簿や学籍簿、アンケートと聞き取り調査、出版物や慰霊碑まで活用した労作だ。  またプロジェクトでは学徒出陣経験者45人の聞き取り調査を行った。当時の状況や心境などが貴重な肉声で語られており、下巻に収録される。  本書は都道府県立の図書館に寄贈される予定だ。近年、一部の大学では学徒出陣に関わる研究、調査が進んできた。こうした大学が協力の輪を広げることで、全容解明と記録に少しでも近づくことが期待される。

 4年前だったか、早稲田で展示や講演をやったり、立命でも講演会があった。だんだんと生存者が減っていく。そういうなかで、本格的な調査がなされたのは重要だと思う。さすがに、さまざまな大学での蓄積もあるから、記事にあるように協力によって、全容を記録することが望まれるなあ。非道なことだったわけで。神宮での壮行会があまりにも有名だけど、ボクの大学では北部の農学部グランドでおこなわれた。そして、多くが、特攻隊員となっていったわけで…。最近はわだつみのこえ記念館の話も聞かないなあ。いまどうなっているのだろう?

2017/07/25

シングルマザーをひとりぼっちにしないために~ママたちが本当にやってほしいこと

Photo  先に発表された国民生活基礎調査でも、母子家庭など大人一人で子どもを育てている世帯の人の貧困率も五〇・八%と高かく、母子世帯は、八二・七%が「(生活が)大変苦しい」「やや苦しい」と回答している。施策は、いまだに十分に届いていない。そんななかで、結成された「大阪シンママ応援団」の活動を紹介するのが本書。シンママとはシングルマザーのことだ。
 当事者たちの座談会からは、シンママがいまどんな困難を抱えているのかがわかる。収入の不安定さにとどまらず、夫の依存症やDV、雇用の不安定や子どもの高学費、本人の健康と不安はつきない。だからこそ、二章で紹介される、どこまでの当事者によりそう応援団の役割は重要なのだ。そのとりくみは、制度や行政をいかに変えていくのかということも視野にいれながら、多くの人がつながっていくすべを示している。


2017/07/24

社会権 人権を実現するもの

41pkktsjiml_sx339_bo1204203200_ 結構、難解な本。抽象的な議論が多いから。ただ、それはどうしても必要なこと。著者たちは、憲法が保障する人権を、自由権を基礎に理解し、社会権をその付随的なものとして理解するような議論に対しての批判からはじまる。個人の自己決定、個人の尊厳といった市民権、自由権を偏重し、社会権を二次的なものと見なす議論は、奥平さんや樋口さんに代表されるリベラル憲法学者を含め根強い。その理論的な背景にまで切り込もうとして行く。それは、能力の個人所有という枠組みにまで迫ることになる。優生思想や能力主義への批判にもそれはつながる。そして、社会権を二次的なものと見なすこうした枠組みは、実は、新自由主義とは親和性が高くなる。そのことも例証していく。
 そもそも、生存、教育、労働を保障する憲法をもちながら、格差や不平等が広がり、豊かな福祉が実現しないのはなぜなのか? 実際には、社会保障はどんどん削減されている。それに対し、自由と生存を、誰にでも保障する社会の実現への議論は必ずしも強くはない。そこには、社会権を軽視してきた日本の法学・社会理論の影響があり、その批判的検討の必要性を考える。では、どう社会権を独自のものとして、根づかせるのか。市民的自由権の限界の認識と、社会権再生の意義を示すことだとする。その道を探求する。格差と貧困に抗する共同が大きな課題になっているとき、新自由主義批判をどう位置づけるのかは、なかなか苦労のいる課題だと思う。そのときに、こうした原理にまでつっこんだ、批判的な議論を踏まえて、議論を重ね、合意を広げていくことが、とても重要だという思いをもった次第。


2017/07/22

これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地

12 沖縄の企画を考えるとき、何冊か、沖縄の関連本を何冊か読む。今回読んでいる本の1冊がこれ。「オール沖縄」の覚悟みたいなものが、タイムスのこの仕事を通して伝わってくる。
 もう一度、基本に立ち返る。それは県がやっていることでもあるし、沖縄の人の思いでもあると思う。本土と沖縄の認識のズレは、沖縄への誤解から生まれる。その誤解を解く発信を沖縄からするというわけだ。目次からひらってもそれはよくわかる。
 I章 在日米軍をめぐる誤解として、「中国の近海進出にどう対抗するのか?」「「普天間飛行場がなければ尖閣は取られるのか?」「地理的に重要だから沖縄に海兵隊を置くのか?」「「海兵隊撤退で沖縄は『南沙状態』になるのか?」…などからはじまって、I章 基地経済にまつわる誤解、III章 こんな誤解、あんなデマはネットにあふれるバッシングの嘘を明らかにする。IV章 沖縄の基地をめぐる誤解は基地のそもそもと基地被害の実際、V章 「普天間」にまつわる誤解やVI章 海兵隊の抑止力をめぐる誤解では沖縄の基地の歴史まで。VII章 日米地位協定をめぐる誤解では、それを支える法的制度まで明らかにする。基地の現状、被害の実相、そして歴史。読んでいるとやはり、限界は超えている、黙っていられない沖縄のやるせなさ、切羽詰まった決意がわかる。そう、決意を伝える。そういう企画をボクもしたいなあ。

2017/07/14

保育現場に日の丸・君が代は必要か?

41xutf4nuil_sx350_bo1204203200_ 中西さんの、新しいブックレット。保育や幼稚園の現場での日の丸・君が代のおしつけがいよいよはじまろうとしている。この導入の問題を、現場感覚で考えたとき、ほんとうにどうなんだろうかって感じる人は少なくはないと思う。学校でおこったことは、その押しつけの結果、子どもが主人公の行事がことごとくつぶされていったことだ。なぜ、そういうことがすすめられてしまうのか、そのことを国旗や国歌の働きもふくめて考えようというもの。その役割から考えれば、国民が主人公では日の丸・君が代は決してないということ。そして、やり過ごそうと思うことが、思考停止に、そして洗脳につながっていく危険も明らかにする。ほんとうに子どもの成長というところにたって、真剣に考えなければいけない問題、そしてそれは、この問題にとどまらず、ずけずけと、子どもや家族の問題にまで、国家が支配しようという大きな流れの中にあるということ。保育の場で譲ってはならないことがあると、筆者は強く訴えている。


2017/07/04

自民党―「一強」の実像

516rzbmi7dl_sx312_bo1204203200_ しばらくほおっておいたのだけど、この間の政治の動きをみながら、あわてて読み終えた。いろいろ考えた。ほおっておいたのは、理由がある。独特の書き方をしているからだ。自民党と政党の組織の側からの分析で、その時代時代に、この党が何をし、どんな役割を国民との関係ではたしたのかなど、大きな流れの中でも分析は基本ないから、ボク的には読みづらいのだ。いちばんの特徴である、財界や経済界との関係も、最小限にとどまっている。だけど、たしかに、なぜ、官邸の力が強まり、一強と言う状況がうまれたのかなど、おもしろい分析は随所にある。だけど、権力のほかのメンバーの分析はないから、分かるのは自民党の側の話だけだけどね。地方との関係などは、あまり知らない話もあって、初めて知ったことも多かった。いずれにしても、安倍「1強」の正体、そしてその脆弱性、支持基盤の狭さ、一方での相対的な強さ、都市圏での流動化の歴史などを見ていくと、今回の情勢激変の背景や、都議選での都民ファーストの躍進などの背景の一端はよくわかるような感じもする。いろいろ役に立った。


2017/06/30

『裸足で逃げる』の若者たちの生育環境・ネットワーク・暮らすこと

Exchange40 選挙も最終版だから、いろいろあるのだけど、仕事上もどうしてもはずせないということで、今日は、この講演を聞きに、国立に。今日は上間講演。この本の面白さ、貴重さをいろいろ考えた1日。本当にいろいろ考えた。沖縄のこと、地続きにある世界。彼女の研究の葛藤。
 話のなかみは、本については、一度書いたし、また今度書く機会があると思うので、個人的に思ったことをちょっと。うーん。ちょtっと失礼なんだけど、彼女はボクと似ているかも、なんて。すぐれた研究者や実践家というのは、その対象(当事者)との距離感が、あるんだよなあ。だけど、その距離感がかなり接近しすぎる。感情移入が、たぶんとびきりに激しい。たぶん、そう。そして、自分もへとへとになる。だけど、タフなのは、たぶん自分の体験からか。きっと、取材者向きかもね。なんていうことを考えながら、話を聞いていた。すみません、上間さん。

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