音楽

2017/03/21

強制収容所のバイオリニスト―ビルケナウ女性音楽隊員の回想

5169s7ykml_sx341_bo1204203200_ 著者のヘレナ・ドゥニチ‐ニヴィンスカさんは、1915年生まれのポーランド人。アウシュヴィッツ=ビルケナウに収容されたのはユダヤ人だけではなく、非ユダヤ系の人たちも、政治犯などが収容されていた。彼女は、自宅に反ナチス活動家を下宿させたことで、母親とともに逮捕された。アウシュヴィッツに移送された。ここが注目の1点目。
 アウシュヴィッツまでの彼女たちの道のりをみると、独ソの密約による支配がもたらしたものを痛感させられる。覇権主義的な国家がもたらしたものが何であったのかの歴史の証言者でもある。これが2点目。
 そして、アウシュヴィッツ=ビルケナウの女性音楽隊のこと。ナチスの収容所での音楽の役割などは、「収容所のマエストロ」のようなすぐれたドキュメンタリーもある。生きるための音楽ということはそうだけど、ここでは、囚人を送りだしたり、迎えたりするそういう音楽隊だ。もちろん、休日の音楽会、ときとして秘密の音楽会もあったわけだけど。だけど、音楽隊の人たちは、生きるには、良心の呵責に耐えて弾くほかなかったという体験だ。そして、そのため、戦後、多くの人はそのことを誰にも明かさなかった。そうした収容所での非人間的な体験や音楽隊の実態を、克明に記した回想録になっている。
 重い内容を問いかける。人間とは、人間にとって自由とは、人間の尊厳とは。その問いを忘れてはいけないなあ。


2011/09/30

居場所の社会学 生きづらさを超えて

51y06nqqx9l_sl160_ バイク便ライダーで有名になった阿部さんの新著。「居場所」を論じたもので、この居場所っていうのも、なかなかその定義からして難しい。だけど、論じていることは、そんなに極論ではない。むしろ現場ではあたりまえのように語られていることであったりする。
 いまの時代は、さまざまな問題が個別の個人的な問題として表出する。それをどう考えるのかは、やっぱり個別の問題への検討を通してこそはじめて可能になる。そういう意味で、個別の問題に徹底してつきあおうとするそういう姿勢は、こうした社会学的な検討から学ぶべきだと思う。しかも、阿部さんの文章は、社会的に批判的な視線もある。
 だけど、そういう分析は、やっぱりある側面についての分析にとどまっていて、その問題は、社会的にはどういう位置にあるのか、そういう社会全体の構造のなかでどうとらえるべきなのかなどはやっぱり不満でもある。だけど、やっかいなのは、その当事者にとって、社会全体のなかで問題をとらえるということはとても難しいことだ。それは、ある種の答えをもちこんで、議論することは容易だけど、それでは心に響かない。そういう意味では、個別の問題からの議論を、一つひとつ積み重ねるなかで、そういう社会への認識をいっしょになって深めていくということしかないのだろうなあ。そういうことも考えさせられる。具体的な居場所の問題は、まあ、横に置いて置くけれども。
 あと、Jポップの歌詞の分析の対談はおもしろかった。80年代に青年向けの雑誌をやっていたときに、当時のいまでいうJポップ(なんて呼んでいたのかなあ)の歌詞の分析なってやったことあったなあ。あまり、ちゃんと歌詞までチェックしていなかった最近の歌をまじめに読んでみるのもなかなかおもしろかった次第。

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2011/05/26

徹底検証 日本の軍歌 戦争の時代と音楽

1106026742  最近は、結構、軍歌にかかわる本の出版が相次いでいるし、その何冊かをこの数年の間に読んでいる。結構、労作が多い。
 ボクの子どものころは、駅前には、傷痍軍人と名乗る人が物乞いをしていた時代だ。今では、右翼の街宣車から流れるときぐらいしか耳にしなくなった軍歌だが、一昔前までは、宴席などでは日常的に聞かれた日本人にとって、とても馴染み深いものでもあった。では、その軍歌とは、いつ、どのようにして生まれ、定着したのか。この本のいちばんの特徴は、軍歌を、歴史の全体のなかで、ていねいにとらえないそうというところ。
 必ずしも一次資料によるものではない著作ではあるけれど、もう1つ、歴史家ではなく、音楽評論家である著者ならではの視点から、なぜ、軍歌のなかには「戦友」のような厭世観を増幅させるようなものが存在するのか、軍歌というのもの特徴を明らかにする。こうして、幕末から日清・日露戦争、第二次世界大戦の敗戦にいたる軍歌の歴史とその特徴とはどんなものえだったのかを丁寧にひも解いている。
 たしかに、音楽を侵略戦争遂行のための精神的支柱として活用するため、軍歌はつくられ、実際にその役割を果たした。同時に、軍歌の歴史は、西洋音楽を受容する歴史とかさなる。だから、その歴史は、日本の近代とは何だったのかをも考えさせてくれると考えさせられるのだ。

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2005/08/01

元ちとせの「死んだ女の子」

 奄美の島唄と言えば元ちとせ? 私は彼女の唄が大好きで、何枚かのCDももっています。結婚して、出産して、しばらく、姿を見せなかった彼女ですが、今月5日のTBS系「NEWS23」に出演するそうです。

 彼女のホームページによると、元ちとせが歌唱するのは「死んだ女の子」。「死んだ女の子」は、トルコの社会派詩人=ナジム・ヒクメットの詩を、ロシア文学者=中本信幸氏が日本語に訳し、その訳詩を読んだ日本を代表する作曲家=外山雄三氏が作曲した名曲。原爆の悲惨と戦争に反対する切なる気持ちを、原爆の火に焼かれてしまった女の子に成り代わって歌った重いテーマの作品。坂本龍一氏がアレンジ・プロデュース。NYでのレコーディングを経て、TBS系NEWS23内において広島原爆ドーム前でのパフォーマンスへも参加することとなったそうです。

 私の知っている「死んだ女の子」は、木下航二の曲のもの。原爆許すまじの作者です。外山先生の手による、この作品もぜひ、聞いてみたいですね。いずれにしろ、いまから待ち遠しい番組です。

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