「生存競争」教育への反抗
今日は、午前中は、40代半ばの執筆者との打ち合わせ。自分よりかなり若い人と話すのはとても大事な時間。たくさんの問題意識をもっていて、たくさんの刺激をもらう。おお、そこまで考えているのかと、ほんとうに刺激をもらった。午後からは会議、そして打ち合わせと続く。あたまを使い切れていないなあ、インプットが不足しているのは事実。ここで、がんばらないといけない。
その合間をぬってインタビュー②の作業。これもまた重要なのだ。
なかなか評判の神代健彦さんの『「生存競争」教育への反抗 』を読む。
1章は学力をめぐるさまざまな議論や関心、教育家族といわれるような現状から説き起こす。そこにみんなが感じる矛盾。2章では、ではそこから教育を変えていくということで、もてはやされる概念としてのコンピテンシーを検討する。子どもの可能性を引き出すことをめざしたそれが、結局は、教育をしばる現実をみせつける。3章では、では教育とはとの原理からの検討を試みる。そこで検討されるのがビースタの「教えることの再発見」。そして、4章では、そのための社会との出会い方を探求する。
神代さんの教育論は、おおむね、共感に満ちたもので、ボクも多くのところで同意する。いろいろうなずきながら読み進める。でも、そのことを前提にしつつ、ずっと感じ続ける違和感の正体とはなんだんだろうか? とも。神代さんに対して、ずっと感じているのは、「優しい」人だなあということ。この本も、「優しい」のだ。基本、悪役は出てこない。たぶん、そこが違和感の正体なのだろうなあ。現実の教育の背後にある、どろどろしたものがうきぼりにされないというか。教育の背後にある、経済の問題しても、需要や消費ということは出てくるけど、「利潤」ということは出てこない。「社会に役に立つ人材」ということは出てきても、「搾取」だとか「収奪」は……。現実には教育はさまざまな利害がぶつかりながら政策としてつくられ、執行される、その「政治の不在」なのだろうか?
ただ、こういう論じ方は、それはそれでよく考えなければいけないとも、思う。敵をつくらないのは、ある意味では、ある世代的な対応とも言える。あえて、そういう議論の設定をすることで、問題と解き越していく。ボクらのように敵とたたかってきた世代でも時代でもないやり方、そこから、どう学び、自分たちの思考と接続していくのかみたいなことも考えさせられる。まあ、ボクの感想は、当たってはいないんだろうけどなあ。
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