特集ワイド アウシュビッツのガイド、中谷剛さんに聞く ヘイトとガス室は一本の線 「今の日本は黄信号」
以前、ETV特集だったか、彼をとりあげたドキュメントはとてもよかった。家には、『アウシュヴィッツ博物館案内』と、『ホロコーストを次世代に伝える―アウシュヴィッツ・ミュージアムのガイドとして』はあるかなあ。
特集ワイド アウシュビッツのガイド、中谷剛さんに聞く ヘイトとガス室は一本の線 「今の日本は黄信号」(毎日新聞) ナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所の跡地にあるポーランド国立博物館(オシフィエンチム)で、唯一の日本人公式ガイドを務める中谷剛(なかたにたけし)さん(51)を訪ねた。ぜひ聞いてみたかったからだ。戦後72年。戦争の記憶が薄れ、排外主義が台頭する中、「負の歴史」を繰り返してしまう懸念があるのか、と。 9月17日午後。アウシュビッツ強制収容所跡に降り立つと、朝から降り続く雨で視界はかすみ、赤レンガの建物群は、陰気な空気を漂わせていた。 日本語での見学ツアーの参加者は記者を含め25人。博物館として公開されている、アウシュビッツ第1収容所(20ヘクタール)と、3キロ先のビルケナウ(140ヘクタール)の両収容所跡を3時間かけて歩いて回る。 中谷さんは大学卒業後、ベッドメーカーに就職。転機は1991年だった。学生時代に旅したポーランドで出会った若者と再会するため、仕事を辞めて再訪した。永住権を取り、働いていたワルシャワの日本料理店で、同僚のポーランド人から「アウシュビッツに収容されていた」と打ち明けられ、壮絶な実体験に衝撃を受けた。「歴史に関わろう」と一念発起し、ガイドを目指した。日本人初の公式ガイドとなって20年。昨年は年間430組を案内した。 アウシュビッツは、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中の40年、占領下のポーランドで政治犯を収容するため開設、後にユダヤ人らを大量虐殺する「絶滅収容所」となった。130万人以上が連行され、ユダヤ人がその9割を占めた。 「ここは、博物館であると同時に犠牲者を追悼する場でもある。どうか忘れないで」と中谷さん。 「ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)」と書かれた収容棟の正門前ではこう語った。「収容者は毎日、この門を通って十数時間の労働に出ました。逃亡を防ぐ有刺鉄線が敷地を囲み、電流が通っていました。少ない食事で重労働を強いられ、餓死する人も少なくなかった」 正門をくぐると、赤れんがの収容棟が整然と並んでいた。ポプラの緑が目に染みる。大学のキャンパスを歩いているかのようだ。心中を察したのだろうか。中谷さんが口を開く。「水たまりに気をつけて。水はけの悪い道がなぜこのままか。収容者がローラーを引き、地ならしした道だからです」 収容所生んだ民主主義 展示室は収容棟などとして使われていた建物だ。敷地内には、ユダヤ人らが虐殺されたガス室や焼却炉跡、犠牲者の骨粉を捨てた池が残されている。欧州各地に住んでいたユダヤ人は当時、「東部に移住させる」と言われ、連行された。ナチス親衛隊(SS)が没収した犠牲者の革靴やかばんに加え、命を奪った害虫駆除薬「チクロンB」の空き缶などが虐殺の痕跡を残している。 あるガラスケースは部屋ほどの大きさがあり、犠牲者の髪で埋め尽くされていた。目にした時、「どれだけの量があるのか」と聞かずにはいられなかった。中谷さんが語調を強める。「8トンですが、何人分かは計算していません。衝撃的ですが、それ以上の人が殺された。もっとも数が問題ではありません。たとえ1人でも、『髪や目の色が違う』『ユダヤ人だから』と殺されたのが問題なのです」 ユダヤ人は人間らしい扱いを一切されず、列車で到着すると、引き込み線脇の荷降ろし場でSSの医師らに「選別」された。労働できるか否か、を顔色を見て決める医師の指先が生死を分けた。連行されたユダヤ人の75~80%がすぐさまガス室に送られたという。 収容所ではドイツ人の精神的負担を軽減するため、ガス室への連行や死体焼却はユダヤ人らに担わせた。証拠隠滅のため、こうした役割の収容者も定期的に殺した。 一枚の写真に言葉を失った。ガス室に送られる直前の人たちを収容者が隠し撮りした白黒写真。野外で裸にされた女性らがガス室へと誘導されている。天地が傾き、ピントがずれていることが撮影者の緊迫感をも伝える。戦後、ナチス・ドイツの戦争犯罪を立証する一枚となった。「事実を伝えなければとの思いがあったのではないか。フィルムは歯磨き粉のチューブに隠し、抵抗組織を通してポーランドの古都クラクフに送った。彼らの命を懸けた知恵と工夫によって、今知ることができるのです」 歴史を冷静に伝えることを信条にする中谷さんだが「ぜひ認識してもらいたい」と熱弁を振るう場面があった。「収容所をつくった政治家は民主主義の下で、国民から選ばれました。だから国民が訴えれば閉鎖できたでしょう」と。 加えて、国際社会の役割にも言及する。「多くのユダヤ人が列車で欧州各地からこの地に連行された。世界は当然知っていたのに見て見ぬふりをした。過ちを一国だけで防ぐのは昔も今も難しい。でも、国際社会が連携して働き掛けていたら、ナチス・ドイツの行動を止められたかもしれない」 解説は「本質」に近づいていく。「ナチス・ドイツはなぜ収容所をつくることができたと思いますか」。次のような解釈が広く知られている。 第一次世界大戦に敗れ、多額の賠償金にあえぐドイツに、世界大恐慌が追い打ちをかけた。社会荒廃が進む中で、裕福な人が多いと思われていたユダヤ人への妬み、積年の偏見が噴き出した。そこにナチス・ドイツが受け入れられる土壌が生まれた--。 中谷さんはさらに踏み込む。「当時の政治家は国民のこうした『反ユダヤ』感情を利用し、社会不安の要因をユダヤ人のせいにした。しかもこうした政治家ほど人気を集めた。常識から離れた『人間の優越性を髪や目の色で決める』という政策にブレーキがかけられなかったのは、なぜか。国民の支持があったからです。異を唱えた学者は主流派から外され、国民も『都合の悪い真実』に耳を貸さなくなった。衆愚政治の結果、アウシュビッツの悲劇は起きた。民主主義の恐ろしさ、その教訓は今にも通じています」 参加者からの反応が少ないことが気になっていたのだろうか。見学が終盤に差し掛かった時、中谷さんは私たちを「挑発」するかのような言葉を発した。 「皆さんがアウシュビッツに関心を持つということは、今の社会にも多かれ少なかれ(排他的な空気が)見え隠れしているからでしょう。でも考えてください。今、私の話を『聞かなくては』という雰囲気ですよね。私はこの場でもう権力を持っている。危ない道に入っています。いぶかしげな目を向けるならいいが、皆が身を乗り出して私の話を聞いている。これこそが誤った道を歩んだ権力者と国民の姿というものなのです」 危険な社会を生み出す萌芽(ほうが)は日常生活に常に隠れているということなのか。 私たちの選択が次世代左右 見学後、中谷さんの考えを詳しく知ろうとインタビューに応じてもらった。語り口は変わらず、穏やかだ。「ホロコーストの始まりは市井の人々が口にした『反ユダヤ』感情、ヘイトスピーチでした。それが時間をかけ、ガス室での虐殺につながった。ヘイトスピーチとガス室は『一本の線』で結ばれている。歴史を学ぶことは、私たちの国が今どこに位置しているかを知る『道具』となるのです」 ならば、日本の「現在地」が気にかかる。中谷さんは「黄色信号ではないか」と危機感を募らせている。日本でのヘイトスピーチを伝えるニュースに心底驚いたからだ。「参加者の中にはナチスのシンボルであるかぎ十字を身につけ、ヒトラーへの忠誠を表すあいさつを使う人もいた。悪意がないだけに、無知は怖い」……
最後に未来を語っていることも大事かなあ。「一人でも多くの人が歴史の現場に足を運び、自らが正しいと思う歴史を選ぶことが大切です。私たちの選択は次世代の20年、30年先をも左右する。政治指導者の歴史観をうのみにするのでなく、自分自身で将来を引き受ける覚悟が重要なのです。そう生きる人が増えていけば、おのずと社会はバランスが取れていくと思います」。次世代に伝えるということかあ。
アウシュビッツには、一度は行っておきたいけどなあ。そういう機会はなかなかなあ。(お金も)
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コメント
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在日イスラエル大使館が、欅坂46のメンバーにホロコーストセミナーにご招待しようとする出来事が、ドイツに置き換えれば、ナチスドイツの前科をごまかそうとする魂胆が見え見えの極右勢力ネオナチ連中に対して、在独イスラエル大使館から、ホロコーストセミナーにご招待するのと本質的には同じ意味を持つものであることは、誰が見ても明らかなことですよね。
ドイツが中国をロールモデルとすれば、この極右勢力ネオナチ連中そのものが、中国の反日活動家と同じ存在であることは、このナチスドイツを戦前の日本に置き換えれば、日本のネトウヨ連中そのものと同じ仲間であることは、アメリカを戦前の日本に置き換えれば、トランプ大統領自らがヒトラー総統の猿真似をしたところで、このトランプ大統領にまんまと騙されてしがみついているだけの隠れ多極主義者(親イスラエルのふりをした反イスラエル)を、日本のネトウヨに置き換えれば、日本会議をイスラム国に置き換えれば、この日本会議こそが、「公共の迷惑」であることは、北朝鮮にしてみれば「戦争ごっこ」なるものに対して、「Jアラートごっこ」に過剰反応するだけの、この自民党そのものが、ネトウヨと本質的には変わらないどころか、アメリカの言いなりと言っておきながら、これをごまかそうとする魂胆が見え見えであることは、これが「お国のため、天皇陛下のため」などと言ったところで、天皇陛下にとっても、これほど迷惑極まりない存在であることは、ロシアのプーチン大統領ではありませんが、「誰が相手にするものか」という心境そのものこそ、国際社会全体の共通認識として、大いに受容と共感的理解に値するものであることくらいのことは、お見通しのことであり、バレバレのことだということが、この日本国および私たち日本人にとっての本質的な見立てそのものであることを見透かせば、これはもう怒りを通り越して、聞いて呆れるどころの騒ぎではないのですが?
投稿: asa | 2017/10/07 14:05