社会権 人権を実現するもの
結構、難解な本。抽象的な議論が多いから。ただ、それはどうしても必要なこと。著者たちは、憲法が保障する人権を、自由権を基礎に理解し、社会権をその付随的なものとして理解するような議論に対しての批判からはじまる。個人の自己決定、個人の尊厳といった市民権、自由権を偏重し、社会権を二次的なものと見なす議論は、奥平さんや樋口さんに代表されるリベラル憲法学者を含め根強い。その理論的な背景にまで切り込もうとして行く。それは、能力の個人所有という枠組みにまで迫ることになる。優生思想や能力主義への批判にもそれはつながる。そして、社会権を二次的なものと見なすこうした枠組みは、実は、新自由主義とは親和性が高くなる。そのことも例証していく。
そもそも、生存、教育、労働を保障する憲法をもちながら、格差や不平等が広がり、豊かな福祉が実現しないのはなぜなのか? 実際には、社会保障はどんどん削減されている。それに対し、自由と生存を、誰にでも保障する社会の実現への議論は必ずしも強くはない。そこには、社会権を軽視してきた日本の法学・社会理論の影響があり、その批判的検討の必要性を考える。では、どう社会権を独自のものとして、根づかせるのか。市民的自由権の限界の認識と、社会権再生の意義を示すことだとする。その道を探求する。格差と貧困に抗する共同が大きな課題になっているとき、新自由主義批判をどう位置づけるのかは、なかなか苦労のいる課題だと思う。そのときに、こうした原理にまでつっこんだ、批判的な議論を踏まえて、議論を重ね、合意を広げていくことが、とても重要だという思いをもった次第。
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