私たちのこれから #子どもたちの未来
先週のNHKスペシャルは子どもの貧困。うーん。番組の途中で、チャンネルを変えた人が多かったんだろうなあ。
市民参加の討論番組「私たちのこれから」、今回は「子どもたちの未来」を取り上げる。「あなたは、自分の将来に明るい希望を持っていますか?」―― 日・米・英・韓国など7か国の若者を対象に、日本政府が行った意識調査によると、「明るい希望を持っている」と答えた日本の若者は62%。80%以上の他の国を大きく下回った。こうした状況に大きな影を落としているのが、6人に1人の子どもが相対的貧困の状態に置かれている問題。この状況を放置すれば、子どもの教育や成長に著しい影響を及ぼすだけでなく、社会全体にも大きな損失を及ぼすという試算もある。一方で、海外の研究では、解決の秘策が幼少期からの「早期介入」にあることもわかってきていて、日本でも幼少期の支援を充実させる方策が議論され始めている。日本が、すべての子どもたちが未来に可能性と明るい希望を持てる「公正な社会」であるために、「貧困の連鎖」をどう断ち切るか。番組では、専門家・市民による徹底討論、そして生放送での視聴者の声を交え、今打つべき対策を具体的に探っていく。
実態編はこれまでのおさらいのような話で、あまり深めたような話はない。ではどうするのか、の対処編は、やたらと「公平」ということが強調される。貧困な子どもへの支出が増えれば、消費税も公平な負担だということまで、主張されてしまう。いつのまにか、そういう議論が強まり、税の再配分、累進課税という問題が、明らかに骨抜きにされているのは注意が必要だなあ。加えての実践編は、ジェームズ・J・ヘックマン。ノーベル賞経済学者だけど、こちらもその公平性。幼児期の教育の重要性に注目するのは、大事なことだけど、幼児教育の制度も、社会的な環境もちがう日本とアメリカで、そのまま議論を持ち込むのはどうなのだろうか。ヘックマンの議論への疑問は、山野良一さんが、『岩波講座 教育 変革への展望3』で書いていたので、ぜひそちらを。しかも番組の解説は、竹中さんの弟子の、中室さん。エビデンスを掲げ、『「学力」の経済学』で売れた人ね。いつのまにか、この言葉も、恣意的に、経済的に強い人の意のままに使われていく感じがするなあ。というわけで、子どもの貧困に向き合うということからすれば、かなりしんどい議論になっていく。「私たちのこれから」は、これが最後だった。うーん。何という幕切れなのかなあ。
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