(耕論)忙しすぎる先生 山口照美さん、内田良さん、小川正人さん
うーん。これだけ、社会問題になっても、なぜ改善にふみだせないのか?
(耕論)忙しすぎる先生 山口照美さん、内田良さん、小川正人さん(朝日新聞)日本の教師は忙しすぎる。文部科学省の調査では、公立中学校で6割が「過労死ライン」に達していた。過酷な働き方は子どもの教育面にも悪影響を及ぼす。何を改めればいいのか。
■「助けて」外に言っていい 山口照美さん(元民間人小学校長)
大阪市教育委員会の民間人校長の公募に応じて、3年間、小学校長をログイン前の続き務めました。児童数100人ほど、教職員数は17人の小さな学校です。
行って、まず感じたのは、公立学校はセーフティーネットなのだなということです。朝起きてこない子を先生が迎えに行くことがあります。その時、この子はご飯を食べていないようだなとか、体操服を買ってもらえていないなという具合に、いろいろ心配して対処します。家庭や福祉の役割を学校が担っている。目の前の子はどうしても気になるという教師のマインドが子どもたちを支えています。
また、私のいた学校は、日本語のわからない外国人の子が何人も転入してきました。彼らは教室で笑いが起きている時、自分が笑われているのではないかと心配になる。そんな不安な気持ちにどうよりそうか、これからの学校が向き合う課題の一つです。
校内の仕事も多い。小さな学校でも運動会や入学式、卒業式は同じようにやらないといけません。教科ごとに主任が必要だし、生活指導や人権教育担当、給食担当もいる。校内の畑を耕す仕事までやっていました。これからは英語にも力を入れなければいけないし、情報通信機器の活用やプログラミング的思考の教育も入ってくる。次から次へと新しいことが付け足され、何も引かれない。どれも大切ですが、すべてをしょいこんだら時間が足りません。……■民間の風で、聖職から解放 内田良さん(教育社会学者)
私の知り合いの教員はみなさん「忙しい」とおっしゃいます。その原因は学校の内部だけではなくその外部、保護者や地域住民にもあります。
教員は、強烈なプレッシャーを感じながら仕事をしています。小学校では「うちの子が熱を出した」とか「泣いて帰ってきた」とかで、夜9時でも10時でも保護者から電話がかかってくる。学校は24時間営業ではありませんが、お構いなしです。ミスを厳しく指摘されると、ますますつらい。こころない言葉に傷つき、次第に心を病んでいく教員も少なくないのです。
中学校では部活動です。顧問に就くと土日も指導に出ていかなければいけません。休もうとすると保護者が文句を言ってくることもよくあります。教員自身も、部活動は教育の一環であり、必要だと思ってしまう面がある。ある教員は「土日も休めない部活はおかしい」とツイートするのは怖いと、私に打ち明けました。しかし、まったく休めず、疲弊しきった状態で子どもに接することの方が問題です。……■残業代払わぬ法律、廃止を 小川正人さん(教育行政学者)
教員の時間外労働が一向に減りません。文科省が4月末に発表した教員勤務実態調査では、10年前より勤務時間が長くなり、過労死ラインとされる1カ月の時間外労働が80時間を超える教員が、小学校で約3割、中学校で約6割になっています。
原因の一つは、日本の教員の働き方です。米英では教員の労働時間は授業時数をベースに決められます。生活指導などは専門スタッフが担っており、教員は授業中心の仕事です。日本は、学級活動や学校行事などを通じて社会性を身につけさせる取り組みも担っています。そのため非常に広範囲で多くの業務を抱え込んでいるのです。
経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の教員が授業に費やす時間の割合は少なく、小学校で全勤務時間の37%、中学校で32%。米英では50%を超えています。
もう一つは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)という法律です。教員の仕事の「特殊性」を理由に時間外勤務手当は支払わず、代わりに月給の4%にあたる教職調整額を一律支給すると定めていますが、実態とかけ離れています。……
だれもが、いまの先生の状態はたいへんという点で一致しているはずなのに。出てくる政策は、どんどん教員を追い立てて、追い詰めるものばかり。これをどうするのか?
もちろん、社会一般の働き方そのものが議論されず、その深刻さが広がっているだけに、困難さはある。教育特有の、教育のいまが抱える問題もある。そういうことも含めて、きちんとした議論を提示しないといけないのだけどなあ。なかなか、できてないなあ。
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