子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から
まさに、ダニエル・ブレイクの世界である。現在に続く、緊縮財政のもとで、切り詰められていく経済困窮者対策。その姿を、保育所の子どもたちを通して描く。いや、これはまいった。映画の背景が手に取るようにわかる。なぜ、あそこで、フードバンクなのかも含めて。そして、そのとこがわかる文章の部分まで読み進めると、不覚にも、号泣に近く泣けてきてしまった。そして、それを日本に被せて考えたとき、ボクらはこの姿をどのように位置づければいいのか。まともな、社会政策が存在せず、自己責任がかの地より蔓延する日本で…。
ブレイディさんの来し方、日本的な自己責任論から出発して、無料託児所のなかで、どのような葛藤をへながら、個人主義の根っこを残しながらも、連帯をどのように見つめているのか、などの変化を考えながら読むものまた、いろいろ考え、教えられたりするのだけど。
内容紹介から
「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」
英国の「地べた」を肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼をもつライターとして注目を集めた著者が、保育の現場から、格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国の「平均収入、失業率、疾病率が全国最悪の水準1パーセントに該当する地区」にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいが混沌としたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底辺層を体現していた。この託児所に集まる子どもたちや大人たちの生が輝く瞬間、
そして彼らの生活が陰鬱に軋む瞬間を、著者の目は鋭敏に捉える。それをときにカラリとしたユーモアで包み、ときに深く問いかける筆に心を揺さぶられる。
著者が二度目に同じ託児所に勤めた2015-2016年のスケッチは、経済主義一色の政策が子どもの暮らしを侵食している光景であり、グローバルに進む「上と下」「自己と他者」の分断の様相の顕微描写である。移民問題をはじめ、英国とEU圏が抱える重層的な課題も背景に浮かぶ。
「政治は議論するものでも、思考するものでもない。それは生きることであり、暮らすことだ。」英国移民で一児の母でもある保育士ライターが放つ、渾身の一冊。
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