午後8時の訪問者
ダルデンヌの映画は、もう何本も見てきたけど、この映画もやっぱりダルデンヌ!、そう思わせる。
若き女医ジェニー。まもなく、大きな病院に好待遇で迎えられる予定だ。今は知人の老医者の代わりに小さな診療所を診ている。今度、勤める病院から歓迎パーティーの連絡電話を受けているときに鳴ったドアベル。しかし、時間は午後8時過ぎ、診療時間はとっくに過ぎていた。応じようとする研修医をジェニーは止める。 翌日、警察がやってきて、診療所の近くで身元不明の少女の遺体が見つかったと聞く。午後8時過ぎにドアホンを押している姿が監視カメラに収められた少女こそ、遺体となって発見された少女だった。ジェニーは罪悪感から少女の顔写真を携帯のカメラに残し、時間を見つけては少女の名前を聞いてまわる。彼女の名前は何? 何のためにドアホンを押したのか? なぜ死んでしまったのか?……あふれかえる疑問の中、少女のかけらを拾い集めるジェニー。ある日、患者のひとりを診察中に少女の写真を見せると、脈が急激に早まったことに気づく。そこから少女の目撃情報を得ていくジェニー。少しずつ少女に迫っていけるように思えたその時、ジェニーは襲われ「この件に近づくな」と脅される。そして、警察からは名前がわかった、という連絡が入る。 すべては解決し、これから元の生活に戻るかに思われたその時、意外な真実が発覚する――。
カメラは、主人公をアップで追う。お得意のカットだなあ。ちょっとした過ちからはじまる。小さなものから、許せないものまで、さまざまな思いが、少しずつ重なっていく。そこにある葛藤が、主人公の葛藤や悩み、それを乗り越える選択と重なっていく。そういうなかで謎が解き明かされていく。その葛藤の背景にはさまざな思いがある。出世と正義、誇り、親子のこと、虐待、それでも人とともにいきたいというヒューマニズム、それが移民だかの問題とかさなりながら。静かに、重なりながらすすんでいく。事件の真相のつらさと、そして、だからこそ主人公の行動が生み出した、救いと再出発。あいかわらず効果音楽もなく、静かに淡々と、その思いをていねいに描く。ダルデンヌ。
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