いじめのある世界に生きる君たちへ - いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉
大津の事件がおこったとき、ボクは、この事件を考えるうえでと、まず手にとったのが中井さんの『アリアドネからの糸』だった。ハーマンの『心的外傷と回復』は注目していたし、この事件では、そうした視点が欠かせないと。ボクだけではなく、多くの方が、そのなかにある「いじめの政治学」に注目をして、この事件を考えた。この本の編者もその1人。中井さんと連絡をとるなかで、実現したのがこの本だ。(と思う) 編者なるふじもりたけしさんから頂いたが、この編者がなにものなのかは、本書には書かれていない(笑)。
「いじめの政治学」を読んだ感想がここにある。 当時も読んでいるだけで、苦しくなった。中井さんは、「ひそかに、自殺まで思ういじめられっ子と教師とに読まれることを思って書いたものである。」と書いているが、今回の本は、さらに、中高生向けに書き換え、再編集したものだ。その狙いがいい。
前作のあとがきの思いは、さらにいっそう明確につらぬかれている。「せめて、その子が全くの孤立者と感じないように、遠くから、きみの苦しさはわかっているよ、それはきみが弱いからではなく、卑屈でもなく、いじめが、そもそも理不尽なほど、いじめ側に有利な構造になっていて、きみはフェアであろうとして自分を責めるのはお門違いだよ、と、いかにいじめ側が優位に立ち、いじめられる側の基盤を掘り崩してゆくかを具体的に書いた。教師には、いじめ側への「無意識の共謀」に陥らないようにというメッセージを込めた。しかし、いじめの政治学は学校だけでなく、家庭でも、さらに子どもだけでなく、成人の世界でも働いている。それに盲目であるよりは、その構造を知るほうが少しはよく、自責を弱め、外傷性を軽くし、自殺は防げることがあるのではないか。これは、外傷に対する治療教育の可能性を示唆する。世界でもわが国でも大量に外傷が発生する現在、治療教育の必要性は緊急である」。
いじめは、いまなお大きな問題として、眼前にある。それだけに、絶対におすすめの一冊だ。
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