いじめのある世界に生きる君たちへ - いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉
大津の事件がおこったとき、ボクは、この事件を考えるうえでと、まず手にとったのが中井さんの『アリアドネからの糸』だった。ハーマンの『心的外傷と回復』は注目していたし、この事件では、そうした視点が欠かせないと。ボクだけではなく、多くの方が、そのなかにある「いじめの政治学」に注目をして、この事件を考えた。この本の編者もその1人。中井さんと連絡をとるなかで、実現したのがこの本だ。(と思う) 編者なるふじもりたけしさんから頂いたが、この編者がなにものなのかは、本書には書かれていない(笑)。
「いじめの政治学」を読んだ感想がここにある。 当時も読んでいるだけで、苦しくなった。中井さんは、「ひそかに、自殺まで思ういじめられっ子と教師とに読まれることを思って書いたものである。」と書いているが、今回の本は、さらに、中高生向けに書き換え、再編集したものだ。その狙いがいい。
前作のあとがきの思いは、さらにいっそう明確につらぬかれている。「せめて、その子が全くの孤立者と感じないように、遠くから、きみの苦しさはわかっているよ、それはきみが弱いからではなく、卑屈でもなく、いじめが、そもそも理不尽なほど、いじめ側に有利な構造になっていて、きみはフェアであろうとして自分を責めるのはお門違いだよ、と、いかにいじめ側が優位に立ち、いじめられる側の基盤を掘り崩してゆくかを具体的に書いた。教師には、いじめ側への「無意識の共謀」に陥らないようにというメッセージを込めた。しかし、いじめの政治学は学校だけでなく、家庭でも、さらに子どもだけでなく、成人の世界でも働いている。それに盲目であるよりは、その構造を知るほうが少しはよく、自責を弱め、外傷性を軽くし、自殺は防げることがあるのではないか。これは、外傷に対する治療教育の可能性を示唆する。世界でもわが国でも大量に外傷が発生する現在、治療教育の必要性は緊急である」。
いじめは、いまなお大きな問題として、眼前にある。それだけに、絶対におすすめの一冊だ。
« 内閣支持50% 不支持32% NHK世論調査 | トップページ | 2016年12月14日の新聞社説 »
「教育」カテゴリの記事
- 「新ジャポニズム 第2集 J-POP“ボカロ”が世界を満たす」(2025.03.16)
- 保育士配置、4歳児「最適15人」 半数が「新基準不十分」(2025.03.15)
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2025.03.11)
- 日本学術会議 国から独立した法人とし財政支援行う法案決定(2025.03.07)
- 家事「夫も妻も同じように行うべき」初の半数超 日経郵送世論調査(2025.03.04)
「読書」カテゴリの記事
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2025.03.11)
- 絵本作家のいわむらかずおさんが逝去 フジテレビ労組、組合員が急増 専務が労組とのやり取りで辞意表明(2025.01.23)
- いのち・人権・平和、 響きあう想いをことばにのせて 落合恵子 × 藤井克徳(2025.01.22)
- 「『オールドなもの』への敵意──左右対立の消失と新たな争点」、【詳細】内乱首謀した疑いで拘束 ユン大統領 取り調べ終了(2025.01.15)
- 孫来襲、2月号ができています。(2024.12.30)
「政治」カテゴリの記事
- 「続 薬禍の歳月 薬害サリドマイド事件60年」(2025.03.18)
- 「新ジャポニズム 第2集 J-POP“ボカロ”が世界を満たす」(2025.03.16)
- 保育士配置、4歳児「最適15人」 半数が「新基準不十分」(2025.03.15)
- 戦後最大の生活保護減額は違法、京都訴訟で逆転 6件目の高裁判断(2025.03.13)
- 78歳父親に執行猶予付いた有罪判決 “被告だけ責めるのは酷”(2025.03.12)
コメント