貧困と保育
読みましたよ! たしかに、幼児期の子ども、とりわけ0~3歳の時期の貧困の経験が、その後の人生に大きく影響するという調査結果が、アメリカでの追跡調査で明らかになっていることは、ここのところ何度も言われてきた。その問題を解決するためには、幼児期の子どもの貧困対策が決定的に重要である。その対策の軸になるのが保育制度であり、そこで、どのような保育がなされるのかという問題である。にもかかわらず、この保育と貧困の問題は、じっくりと論じられたことがないのだ。その重要性は、ボクも企画で、なんどか指摘はしてきたのだけれども。
本書は、乳幼児期の貧困の実態、保育現場にそれがどのように現れているのか、保育所保護者への調査、一方で保育の側の貧困な実態、さらには、なぜ子育て世帯・母子世帯が貧困に陥るのかという、若い世代の雇用・労働と社会保障の現状、子どもの発達と貧困と本格的に論じている。ほんとうに、この問題を政策のうえでも反映していくことが求められていることがよくわかる。
注文があるとしれば、保育所の役割。とりわけ、ソーシャル・アクションと言えるような、社会的発信が保育所からなされるべきではないかという問題。子どもに向き合うだけで解決するのかということ。その点では、保育制度の現状や改悪の流れへの批判ももっと踏み込んでもよかったのではないかとも思えるのだけどね。
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