さいごの色街 飛田
5年前に出版された時から、いつか読まなくてはいけないと思っていたのだけど、すぐに読めなかった。昨年、文庫になったので、やっと手に取って読んだ。ボクにとっては、ルーツ探しのような本。ボクの戸籍上の祖父は、飛田で商売をしていた。ボクの父、つまり戸籍上の祖父の息子は、塀の外に住んでいた。祖父が、飛田をあとにするのは、ボクが小学校の後半になるころだと思う。だから、60年代の半ばか後半ぐらいまでは、ここに住んでいた。ボクの(父の)家も、外だとは言っても、すぐ近所で、祖父の店にはよく、おふろに入りにいっていたりしたし、そもそも、買い物そのものは新開筋商店街から続く、商店街を利用していた。ボクも、かなり大きくなるまで、この商店街の一番東の端にあった本屋さんに、漫画を買いに行っていた。その近くには、貸本屋もあって、よく利用していたし、旭町商店街にあったそろばん塾にも通っていた。たしかに、この街には今とは全然違う活気があって、たしか3のつく日には、夜店が並び、よく連れて行ってもらった記憶もあるのだが。
売春禁止法が完全施行されたのが58年だから、ボクにあは、それ以前の記憶はない。ボクが祖父の店に行っていたころには、飛田そのものには賑わいがあったという記憶はない。その筋の商売も飛田には大きなトルコ風呂の店が営業をしていたし、むしろ、いわゆるスタンドという営業方法が主流だったのではないかとも思っているだけど。だけど、それでも、祖父の店に行くと、季節ごとにかざりは変わっていたし、店の前には、大きな縁台のようなものがつくられていたので、形を変えた営業は、部分的には続けられていたということなのだろうか。この本を読みながら、ここで書かれた、その時代の飛田の様子と、自分の記憶とをいろいろ重ねながら、確認をしたり、うなずいたり。
たしかに祖父は羽振りはよかったのか? 息子に家を残しつつ、いわゆるお妾さんの子どもたちに、かなりの財産をゆずったと聞くから。
この本、そのものはやはり、「貧困」の話である。飛田で繰り広げられる連鎖ということと、そこで暮らす人たちによりそっていて、個人的には 共感はできる。とてもねいな取材もされている。
だけど、ボクの記憶にある飛田と、いまの飛田は、ボクのなかではずっと結びついていない。今のような飛田の姿に、いつどのようになったのかは、結局、よくわからない。だれがどのようにいまの飛田をつくったのか?
もう一つわからないのは、暴力団の問題。ボクの記憶でも、ほんとうに暴力団の多い場所だった。では、いま、それは、ほんとうのところはどうなのか?はほとんど語られることはない。うーん。それぐらい、ここを取材し、そのほんとうの実態に迫ることは難しいということなのか。そんなことを考えながら、自分のルーツについて、あらためてあれやこれやと考えた。たぶん、そんな機会はないだろうけれども、もし、そんな機会があれば、自分でもこの飛田について、調べたり、取材をしたりしてみたいということは思わなけわけではないのだけれどもなあ。
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