沖縄戦と孤児院 戦場の子どもたち
浅井さんが、沖縄留学もして、執念でつくりあげた本。地上戦の場となり、また、軍は戦争犯罪追及をおそれて、資料を焼いたため、ほんとうに、沖縄には資料はない。アメリカも、戦後の沖縄統治の細部については、人権抑圧もあり、隠しているのだと思う。しかし、沖縄では、現実に、全住民を巻き込んだ沖縄戦があり、多くの子どもたちが家族を失い孤児となったのだ。では彼らは戦後、どのように生きたのか。収容された米軍統治下の孤児院は、米軍が沖縄の秩序維持のために作ったものだ。本土における戦争孤児研究も近年やっとすすみはじめたが、沖縄は本質的に違う。それは根こそぎ奪われて、住民が人として生きることを保障するような形で、統治がおこなわれなかったことだ。孤児院も、苦しい食料事情、感染症の蔓延、衰弱死……。戦場を潜り抜けて辿り着いた孤児院はいのちを保障する場ではなかったのだ。本書は、ネグレクトをはじめとし実態に迫る。
同時に、さまざまな歴史の側面がある、そうした困難のなかであっても、沖縄における児童養護の戦後の原点が形成される。その最初のとりくみは、サイパンの孤児院。松本「自叙伝」という新しい発見もあり、その姿、軌跡のとりくみを追う。そして沖縄でのスタート。
また、田井等孤児院では、沖縄にいた朝鮮人の日本軍「慰安婦」の方たちが、孤児院に従事をしていたという事実も、ここでは明らかにされる。たしかに、そういう話は聞いたことがあると思うけど、真正面から光があたった感じで、いろいろ考えさせられる。そして、八重山・宮古の戦争マラリアと、孤児たちの戦後というもの考えなければならないし点である。
沖縄戦研究における空白となっている問題をおいかけた本当に、重要な一冊だと思った。
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