現代史の中の安倍政権 憲法・戦争法をめぐる攻防
治さんの新著もおもしろい。昨年は戦争法に明け暮れた。その戦争法を強行採決した、安倍内閣だが、安倍晋三首相の在職日数はまもなく池田首相を抜き、戦後、佐藤、吉田、小泉、中曽根につぐ5番目の首相になる。特異な思想をもつ、特異な首相ということが強調されてきたわけではなるが、安倍内閣は、容易ならざる内閣と、治さんは指摘する。軍事大国化のための改憲と、新自由主義改革の再起動という、日米支配層の念願を背負った切り札の内閣だという面は見逃せないのだ。そして、その推進力に、安倍さん特有の「大国への執念」があるということになる。
この本は、そういう安倍政権の本質を、見事に描きながら、戦後の歴史のなかで、「画期」となった昨年の戦争法の制定の意味を分析する。戦後の憲法「改正」史をふりかえりながら、同時に、法律そのものの分析も鋭い。
とりわけ、治さんは、戦後の憲法史を、国民の平和・護憲意識と、憲法を骨抜きにする支配層の攻撃とのせめぎ合いとして見る。そして、その国民の運動への関心と分析もするどく、そして、それが運動そのものへの励ましともなっている。
それぞれの論文は、くり返される講演をベースに、ヴァージョンアップしたものになっている。大きな構成、大きな論建ての鋭さとともに、個々の論でも、はっとされる指摘がちりばめられている。とりわけ、憲法史に関しては、昨年治さんがつくった資料集の作業の中で、考えた論点がたくさんあって、そこがまたこの本の魅力であり、学ぶことが大きいと思うのだ。
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