家族幻想: 「ひきこもり」から問う
杉山春さんの新著は、ものすごく刺激的で、衝撃的。同じような体験を持つ人にとっては、かなりのダメージ。ボクも読んでいて、とても苦しかった。
もちろん、ひきこもりの背景というのは、多様だ。そんなことは、多分著者は百も承知。だけど、大きな要因に社会的な視線、規範と言われるものにそった視線があることは間違いない。そして、それは家族というものによって、屈折し、肥大化する…。個人が孤立化し、家族がほんとうに、むき出しに大きな社会のなかにおかれるという現代においては、その肥大化はいっそう大きくなる。だから家族という視点から問題をとりあげる。ボクだってそうだ。ずっと、子どもの頃から、他者の評価にこだわってきたし、それは親の期待以外なにものでもなかった。不仲な良心、母による父への避難と、子どもへの期待……。そうしたことによって生まれた家族によって、屈折した、規範意識から、ボクもずっと自由にはなれなかった。18歳で家を飛び出したのもそのことが大きいだろうし、それでボクは、ある程度、自由になれたということも。だけど、それで解決したわけではないのだった。そして、子育てをするなかで、いろいろなことに直面し、それがまた自分を追い込むことなる。
この本そのものは、40代を超える年齢になってきた、ひきこもりの当事者からの聞き取り、そして、その親からの聞き取りを軸にかかれている。その生きづらさ、規範へのからめとられ方が凄まじい。そして、著者自身の自分語り。著者が自分を語ることで、いっそう、その当事者たちの思いや苦悩が、とてもリアルで、そして、身近にある問題であることがわかる。
苦悩は、どのように乗り越えられるのか? 家族というものが、ほんとうに一時に形成され、いつか消えていく、そういうものとして、相対化し、そこから身軽になれればどれだけ楽なことか。たぶん、かつての家族から逃げている自分を、それでいいんだと言えることができればどれだけ楽なことか……。
それでも、社会は、個人を家族に囲い込む。政治は、家族に責任をおしつける。その流れがなかで、どのように家族から解き放たれ、社会につながっていけるのか? 居場所の取り組みは、そのヒントであり、希望ではあるのだろうけれどもなあ。
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