それはホロコーストの"リハーサル"だった ~障害者虐殺70年目の真実~
先週土曜日のETV特集。この間、ハートネットTVで放映されたものの集大成のような内容。だけど、新しい内容もあるし、構成もよく考えられていた。
600万人以上のユダヤ人犠牲者を出し、「人類史上、最大の悲劇」として語り継がれてきたナチス・ドイツによるホロコースト。しかし、ユダヤ人大虐殺の前段に、いわば“リハーサル”として、およそ20万人ものドイツ人の精神障害者や知的障害者、回復の見込みがないとされた病人たちがガス室などで殺害されたことについては、表だって語られてこなかった。
終戦から70年もの年月がたった今、ようやく事実に向き合う動きが始まっている。きっかけの一つは5年前、ドイツ精神医学精神療法神経学会が長年の沈黙を破り、過去に患者の殺害に大きく関わったとして謝罪したこと。学会は事実究明のために専門家を入れた国際委員会を設置、いかにして医師たちが“自発的に”殺人に関わるようになったのかなどを報告書にまとめ、この秋発表する。
番組では、こうした暗い歴史を背負う現場を、日本の障害者運動をリードしてきた藤井克徳さん(自身は視覚障害)が訪ねる。ホロコーストの“リハーサル”はどうして起きたのか、そして止めようとする人たちはいなかったのか・・・。
……
「障害者殺害はリハーサルだった」という切り口ではじまる。だけど、歴史をたどると、それはナチの主導というより、医師たちがナチの思想を「忖度」して、自主的にはじめられたものだったことが明らかになる。しかも、謝罪は、まだ5年前に精神障害医学会がおこなったというもの。優生思想が広がり、「生きるに値しない障害者」という考えがひろげられる。そして、断種法へと。対象は、先天性精神薄弱、精神分裂病、そううつ病、遺伝性てんかん、舞踏病、遺伝性の盲、遺伝性のろう、遺伝性重度身体奇形、重度アルコール中毒・・・それが、障害者殺害=T4作戦へのつきすすんでいく。そのとき、国民は気づいてなかったのか、気づきながら国民はなぜ見逃したのか。そういったことを問いかける。
T4作戦は、ドイツがポーランド進出する開戦日の1939年9月1日にはじまる。退院の見込みがあるか、労働者として使えるか、生きる価値があるかが基準にされ、「恵みの死」という名の下ですすめられた。T4作戦は、司祭・フォンガーレンの「これは恵みの死ではなく殺害だ」の訴えによって1941年に中止されるが、障害者虐殺はその後も止まらず、「野生化」され、20万人が殺された。それがユダヤ人大規模殺害(600万人)へとすすんでいったのだ。
人間の尊厳が踏みにじられたとき、何がおこるのか。そのことは「障害者に出やすい」。これは、いまの時代にも明らかに重なって見えるなあ。
« 安保法アンケート「表現不適切」校長謝罪 | トップページ | 学生苦しめるブラックバイト、厚労省が初の実態調査 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- プーチンとゼレンスキー ロシアとウクライナの100年(2023.11.23)
- 「チェーサーが終わる日 -在日コリアン 世代を越える葛藤-」(2023.11.18)
- 「個人的な大江健三郎」(2023.11.12)
- 「緑豆の花」 再論(2023.10.22)
- 「砂漠の英雄と百年の悲劇」(2023.10.17)
「平和」カテゴリの記事
- 屋久島沖「オスプレイが墜落した」118番通報 アメリカ軍所属8人搭乗(2023.11.29)
- (ひと)堀由貴子さん 岩波書店「世界」を四半世紀ぶりにリニューアルする編集長(2023.11.28)
- プーチンとゼレンスキー ロシアとウクライナの100年(2023.11.23)
- 内閣支持率25% 政権復帰後最低 不支持率は最高 朝日世論調査(2023.11.20)
- ガザ市シファ病院は「死の地帯、絶望的」…WHOチームが1時間の視察(2023.11.19)
「政治」カテゴリの記事
- 「新しい資本主義」論と経済安保体制の危険性――岐路に立つ世界・日本・地域(2023.12.02)
- 生活保護費引き下げで国に賠償命令 名古屋高裁 全国初(2023.11.30)
- 屋久島沖「オスプレイが墜落した」118番通報 アメリカ軍所属8人搭乗(2023.11.29)
- (ひと)堀由貴子さん 岩波書店「世界」を四半世紀ぶりにリニューアルする編集長(2023.11.28)
- 4日前の記事――国の責任、二審も認めず=原発避難訴訟―名古屋高裁(2023.11.26)
「歴史」カテゴリの記事
- 「謎」多い飛鳥岡本宮の塀か 35メートルに及ぶ柱穴の列を確認(2023.11.22)
- 「チェーサーが終わる日 -在日コリアン 世代を越える葛藤-」(2023.11.18)
- とても満足した時間(2023.11.06)
- 前衛12月号ができました(2023.11.02)
- 辺野古代執行訴訟始まる 高裁那覇支部で口頭弁論 玉城知事が意見陳述(2023.10.30)
コメント