寄り添うのは、傷だらけの希望 子ども・若者訪問支援 谷口仁史
NHKのプロフェッショナルで、谷口さんの番組を見た。やっぱりすごかった。
どんな境遇の子も、見捨てない
ひきこもり、不登校、自殺未遂・・・社会の人間関係に傷つき、心を閉ざした若者たちの多くが、悩みや苦しみを誰にも打ち明けられず、孤独の中で暮らしている。そうした若者たちを救うため、谷口は“アウトリーチ”と呼ばれる訪問支援を行う。若者たちのもとに、こちらから出向き、直接支援する手法だ。谷口は、このアウトリーチの達人と言われる。
「ひきこもりや不登校、そして非行など、若者たちが抱える課題は、社会から孤立することによって深刻化しやすくなります。そうした若者が自分から相談施設に足を運ぶことは難しく、彼らが自立に向けたきっかけを得るには、アウトリーチが必要なんです。」
だがアウトリーチは、極めて高い援助技術を要し、熟練の支援者でも取り組むことが難しい。心を閉ざした若者との直接接触はリスクが高く、彼らをさらに追いつめ、状況を悪化させる恐れもあるからだ。しかも、谷口への相談のほとんどは、複数の支援機関がすでに本人との信頼関係の構築に失敗し、対応できなかったケース。そのため本人の、支援者に対する不信感や拒否感が強い場合が多い。最大の難関は、最初のアプローチだと谷口は語る。
価値観のチャンネルを合わせる
谷口は、心を閉ざした若者たちと会う前に、彼らについて必ず綿密な分析を行う。本人の好きなこと、性格、生活リズム、嫌がるNGワードなど・・・。あらゆる情報を家族や周囲の関係者から徹底的に聞き取り集めるのだ。そうした情報の中から本人にとって受け入れやすい言葉や態度を考え、心を開く糸口を探る。
例えば、ネット依存の状態にある若者には、インターネット上のゲームの世界から会話を呼びかける場合もある。本人との信頼関係を築くことができなければ、支援は始まらないと谷口は言う。
「心を閉ざした若者たちに共通するのが、“自分のことを誰も分かってくれない”といった感情なんです。われわれが訪問するときには、少なくとも“この人だったら自分のことを分かってくれるかもしれない”と思ってもらわなきゃいけないんです。まずは本人の価値観にチャンネルを合わせていくことが必要です」
もちろん、こうした若者の問題の根底には、あきらかに貧困の問題があり、社会自体の抱える問題がある。そういった社会のありようとの関係でどう考えるのかということは、番組で示されているわけではない。そのことはそう。そのことを考えながら、こうした実践の意味を考える。
決してカリスマではない。そういう意味で、それなり地域の連携は示されてる。と同時に、こうした実践の、組織性、あくまで専門家が集団で対応しているとうことが、それありに感じられた。「われら」というような言い方を谷口さんもずっとされていた。そのことが大事なんだろうなって思ったけど。
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