公開シンポジウム 学問の自由をめぐる危機 ―国旗国歌の政府「要請」について考える―
昨日の夜は、東大です。
学問の自由を考える会のシンポジウムです。この団体は、広田さんたちがよびかけてつくった団体。
まずは、石川健治さん(東京大学・憲法学)が、「天皇機関説事件八〇周年―学問の自由と大学の自治の関係について―」と題した、報告。石川さんらしい報告。最初に、会場の法文1号館、25教室は、美濃部達吉氏と東大ポポロ事件に直接関わる場所だと。うーん。そうか。去年の、全国憲の集会での、石川さんの市民集会デビュー講演の続きのような話。美濃部の話から、皇機関説の源流は、ドイツの法学者のゲオルグ・イェリネックに。そういう憲法学の歴史をふり返りながら、去年は立憲主義にかかわる話だったのが、今度は学問の自由をめぐって。美濃部、芦部、樋口、そして石川と続く東大の伝統のなかでの石川さんの話は、まさに東大教養主義そのものだけど、話に引き込むのはうまいなあ。この人が政治と学問のことを語るということの意味と意義があるのだとなあ。話の中身は嫌いじゃないし、学ぶことは多かった。去年聞いたとき、終わった後、誰かと話して、教師が好きな講演という話になったのを思いだした。
実は、昨日いちばん聞きたかったのは、橋本伸也さん(関西学院大学・西洋史)の「大学と国家―ヨーロッパ大学史に見る悩ましい関係」。実は、大学の後輩で、ほのかに記憶のある後輩との関係。教育史の専門家らしく、大学の自治の成り立ちを歴史的に、短い時間でていねいにふりかえる。これはたくさん知らなかったこともあったし、なによりスローガン的でなく、いろいろ揺れ、葛藤しながら、さまざまな力関係のなかで、形成されていく。未完のアジェンダという提起はとっても考えさせられる。
最後は、山口二郎さん(法政大学・政治学)が「学問の自由と民主主義」。山口節ですけどね。民主主義の問題という角度から、いろいろ提起。
結局、こうした議論が、どう国民的に説得力をもっていくのか。ここがいちばん悩ましい。そしてその前提で、大学人がどう発信していけるのか? 学問そのものにつきまとう権威主義や、東大などの議論と、地方大学のかかえる問題、私学の問題、さまざまに違う。ボク的には、橋本さんが言っていた、教育という面に注目しながら議論をたてるということには共感するのだけど。第一、なかなか学生のことが語られないしね。むしろ、いろいろ考えることが多いなあと、いろいろ考えさせられたというのが最大の感想ではあるのだけど。
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