岐阜空襲、惨状伝える 消せない記憶、初めて手記
戦後70年。今年の8月までは、全国の空襲の70年にあたることになる。否が応でも、被害体験が記憶の表面に浮き出てくる。その年に、戦争法。その被害体験にもとづいた平和意識を甘く見ているのだろうか?
岐阜空襲、惨状伝える 消せない記憶、初めて手記(岐阜新聞)一夜のうちに岐阜市中心部が焦土と化した1945年7月9日の「岐阜空襲」から、間もなく70年を迎える。同市坂井町で喫茶店を営む五十里(いそり)正弘さん(79)は、小学3年生の時に遭遇した米軍による空襲の記憶を、次世代に伝えようと初めて手記にまとめた。逃げるときに目にした、乳母車に覆いかぶさる母親の黒焦げの遺体や、ひたすら念仏を唱える人々の姿などを生々しく記録し、平和の大切さを訴えている。
国内の各都市で空襲による被害が甚大になってきた当時、五十里さんは岐阜駅近くの坂井町の自宅で父と母、姉の4人で暮らしていた。
7月9日夜、空襲警報が鳴り響いた。「今日も警報だけか」と思っていたが、その夜は違った。突然、「ザザザザザーッ」という音が聞こえ、家の外へ飛び出すと、焼夷(しょうい)弾などが次々に頭上から降ってきた。街は逃げ惑う人であふれ、五十里さんは父と姉からはぐれてしまい、母と一緒に長良川の方へと向かった。
混乱の中どこをどう通ったのかは覚えていないが、「街中はまさに地獄絵だった」と振り返る。着衣に火が燃え移り「熱い熱い」と転げまわる人、焼夷弾が防空壕(ごう)を直撃し即死状態の人-。うめき声が至る所で響く中、岐阜高校裏の長良川の河原で母親に身を寄せ、恐怖で眠れない夜を明かした。
翌朝、生き延びた2人は焼け野原となった街を歩きながら、家のあった方向へと歩いた。家は全焼し跡形もなかったが、幸い、父と姉は無事で家族みんなが生きているのを喜びあった。
自宅の周りには、性別が分からない炭のような真っ黒い遺体がいくつも転がっていた。「悲惨な光景と、鼻につく死臭は今でも忘れられない」と話す。…
徳島大空襲70年 冥福祈り不戦誓う (徳島新聞)徳島大空襲70年 冥福祈り不戦誓う 死者約千人、負傷者約2千人もの犠牲者を出した徳島大空襲から70年を迎えた4日、徳島戦災死没者追悼式(徳島戦災遺族会主催)が徳島市内のホテル千秋閣で営まれた。遺族ら約60人が犠牲者の冥福を祈り、不戦への誓いを新たにした。
参列者全員で黙とうをささげた後、遺族会の片山光男会長(83)=小松島市田野町=が「私たちは戦後70年、諸霊のご加護で混沌とした世相を生き抜いてきた。戦争の悲惨さを語り継ぎ、平和の尊さを訴えていきたい」と式辞を述べた。遺族らは白い菊の花を祭壇に献花し、手を合わせて犠牲者をしのんだ。
式後に空襲体験を語った徳島市北矢三町1の竹宮悦子さん(79)は「当時9歳だったが、幼い弟2人を連れて必死に火の海の中を逃げた。焼夷弾は大人も子どもも関係なく命を奪った。戦争は二度と繰り返してはいけない」と力を込めた。…
広範な被害体験は、受忍論の受容とむすびつきながら、厭戦感、そして絶対平和主義にむすびつく。その平和意識が戦後の日本社会の形成に重要な影響をあたえたのは否定ができない事実。もちろん、そのときに加害が抜けおち、そして、戦争の責任をあいまいにする面をもつ。だけど、ここから、より深い、戦争認識に、歴史認識に発展させていく可能性も条件もあることも事実。戦争法の議論も同じ、どのように認識を深めていくのかが、ボクらにあたえられた課題だと痛感している。
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