戦後責任 アジアのまなざしに応えて
ボクは、個人的には、著者の一人である内海愛子さんをとっても尊敬していて、それで、この本もやっぱり読まなくてはと思って、読んだ本。戦後70年を考えるうえで、とても大事なことが議論されている本である。
座談のメンバーである、内海さん、田中先生、大沼さんの3人はまちがいなく、この分野の先達である。とりわけ、あの戦争のアジアへの加害の問題をかなりはやい時期からとりくみ、そして運動にもかかわってこられた人たちである。そして、この問題は日本の戦後の歩みと不可分であり。「戦後責任」という言葉を早くからつかわれてきた。と、同時に、たしかにわれわれの議論としては、「戦後責任」という言葉は、天皇制権力と、それと地続きにある戦後政治の責任を曖昧にするという視点から、避ける傾向がボクらにあったと言うことも否定のできない事実であると思う。
それだけに、悩ましい。だけど、たしかに、戦後の歩みはさまざまに複雑で、それは東京裁判というものの性格をどう考えるのかということもにかかわるし、その後の、我々的な言い方をすれば「寛大なる講和」という性格をもった、サンフランシスコ講和とその体制の政治性のもつもののなせる業ではあるのだけど。だけど、その性格を浮き彫りするい国籍問題な、植民地支配と不可分な問題に、たしかにボクらは、無関心というか、無感覚でありすぎるほどの問題があるわけで。このときの吉田の役割も含め、どれだけ日本の戦後政治が、植民地支配や侵略というものに対して、犯罪的な立場であったのか。あらためて痛感させられるし、それほどまでに、アジアの視点の欠落があったのか。
だけど、それだけに、大沼さんのすごさとともに、いやらしさもとっても感じてしまうところもある。国際法の分野における、大沼さんの果たした役割はものすごく痛感させられたし、彼の業績をちゃんと学ばなければと痛感させられるのだけど。国際法は、理念的なものよりも、ときの国際関係のなかでの、法的関係を重視するわけで、ものすごく国際関係のなかでの議論を重視をする。それがともすれば、さまざなな政治的な関係のなかでの問題の捉え方に傾斜する。そういういやらしさが、運動に対する評価にも反映する。なんとなく、最近の某編集者のM氏の議論もかさなってくるなあ(笑い)。
戦後史の中で、もっとよりトータルな視点から、こうした問題の議論をしっかり整理するのは大きな課題なのだと思う。たしかにさまざまな運動も、ときのいろいろな政治的な関係とは無関係ではなかったけど。大沼さんのような一面的というか図式的というか、政治的結論さきにありきというかできはなく、もっと立体的な議論の整理があるべきだしなあ。
などなど、とっても問題意識が膨らむような本だった。そして、内海さんはやっぱりすごいなあと思った次第。
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