鉄くず拾いの物語
DVDで見た。これも見逃した映画。うん、なかなか映画館には行けないなあ。時間がないもん。時間を見つけて、DVDがせいぜい。
だけど、この映画はほんとうに驚いた。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナに住むロマのナジフとその妻セナダは、二人の娘と一緒に暮らし、セナダは三人目を身ごもっていた。
ナジフは拾った鉄くずを売り一家の生計を支え、貧しいながらも穏やかで幸せな生活を営んでいる。
ある日、ナジフが長い労働から家に帰ると、セナダが激しい腹痛に苦しんでいた。翌日ナジフは車を借り、一番近い病院へとセナダを連れて行く。
流産し5カ月の胎児はお腹の中ですでに死んでいると診断され、遠い街の病院で今すぐに手術をしなければ命に関わる危険な状態だと言われる。
しかし保険証を持っていなかったため、彼らには支払うことのできない980マルク(500ユーロ)もの手術代を要求された。
ナジフは「分割で払わせてくれ」と、必死に妻の手術を看護師や医師にお願いするも受け入れられず、その日はただ家に戻るしかなかった。
ナジフはセナダの命を救うため、死にもの狂いで鉄くずを拾い、国の組織に助けを求めに街まで出かけてゆくが…
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの戦争を生き抜いた、ロマの物語。だけど、その生活はあまりにも過酷。つつましく、必死で生きる家族にふりかかる理不尽な出来事。その解決への展望のなさ。そのなかでも、もがき苦しみながら生きる。
たんたんと、実話を当事者が演じるという驚くべき手法。うまいとかへたとか言うのではない。そのものが生きるということへの訴えかけ。
この過酷は、たぶんもう、彼の国の話ではない。もちろん同じではないけど、医者にいけなくて、病を重篤化させて、瀕死の状態で病院に運び込まれた友人のことを思った。彼もまた必死で生きる人なのだ。
人が、人として生きることのできる社会になるためには、ボクらは何をすればいいのだろうか?かみしめるように見た映画。
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