やんばるからの伝言
この本は、日本平和委員会発行の「平和新聞」に2009年2月から連載しているエッセイをまとめたもの。ちょうど、政権交代の直前の時期にあたる。SACOでの北部演習場の過半の返還は、あらたにヘリパッドを建設することの引き換えだった。しかもそこには。オスプレイがやってくる。抗議して座り込んだ高江住民は、政府によるSLAPP(スラップ)訴訟の被告にさせられてしまった。政府は、「ヘリパッドの是非」を「通行妨害の有無」に論点をすり替えたのだ。そのたたかいのなかでつづられた。全編に、豊かな高江の自然と、そこで、生き生きと、楽しく生きようとする人たちの姿が伝わる。著者の伊佐さんも、沖縄伝統の位牌(トートーメー)を作る木工の仕事を父親から継ぎ、木工場の騒音があるため、沖縄市から高江に移り住んだ人だ。そして、そのたたかいは、非暴力による抵抗だ。阿波根さんの非暴力と、瀬長さんの不屈をまさにうけついだたたかいは、辺野古とならぶ。「標的の村」もいいけれど、その非暴力の精神は、こちらのほうがより生き生きと浮き彫りにされている。それだけに平和への思いも伝わる。
だけど、ときとして強引にすすめられる建設工事の実態に、そして政府による住民いじめの実態に、読んでいて悔しくなる。そのなかでの住民たちの思いに、ときどき涙する。見慣れた森住さんの高江の写真が、その自然の美しさと、ここに生きる人々の表情を伝えて、その思いをいっそう強くさせる。「ここで平和に暮らしたい」そういう思う、それこそが日本国憲法の精神なのだということがわかる。
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