地方国立大学 一学長の約束と挑戦 和歌山大学が学生、卒業生、地域への「生涯応援宣言」をした理由(ワケ)
ボクが大学に入学したのが77年の4月で、その年の3月にヤマケンさんは、その大学を離れている。ちょうど入れ替わりで直接の面識はない。ボクがヤマケンさんを知ったのは、保育園や学童保育の運営にかかわっていたころ、アトム保育所の取り組みを知ったことだった。アトムの存在はとっても刺激的で、たくさんのことを学んだことを覚えている。そのヤマケンさんが、和歌山大学の学長になり、昨年の卒業式の式辞では、大学の「学び続ける自由」」の危機を訴え、大きな反響を広げた。
この本の、メインのテーマになっているのは、和歌山大学の、「和歌山大学は学生とOB・OGと地域を、とことん応援します」というとりくみだ。生涯を応援するというメッセージには、学生がこれまで生きてきた人生で受けてきた傷と、学び直しへの応援とともに、これから若者たちが生きていくうえでの学び続けることへの応援という意味がこめられている。そして何よりもその若者たちを支えるために、大人が、社会が変わっていかなければならないということへの応援だ。だからこそ、大学発で地域をまきこんだとりくみの視点、地域づくりの視点が強烈だ。今、地方国立大学は国と中央財界による競争と選別と淘汰の嵐に直面、予算減の一方、国の眼鏡にかなう新規事業をやれ、という圧力に呻吟。それに伴う「期限付き」という不安定雇用の教職員は増え続ける現状が続いている。それだけに、地方から発信すること強いメッセージは、ほんとうに大事にしなければいけない。
そして、その視線は、社会教育研究者ならではのもの。そういえば、ボクは、学生のころ、本当は社会教育を専攻したかった。二回生のころは、社会教育のゼミに参加していたのだけど、なかなか困難な学内事情もあり、専攻は教育行政に行った経緯がある。だけど、あのまま社会教育を専攻していればボクの人生はどうなっていたのだろうとふと考えてみたりもする(もっとも、その専攻でもほとんど学ばなかったのではあるのだけど)。
学長としての山本さんのとりくみは、大胆であり、かつ柔軟である。だけど、発達ということへの強烈な信念というものに裏打ちされている。柔軟さと信念、そういうことを考えさせられる。現実の社会と、現実の若者たちの状況を前に、何をどう問いかけるのか。
そして、そういうとりくみの根底に、アトムの実践がある。久しぶりにアトムのとりくみについて読んで、心が踊った。かつて、保育や学童保育の運動をやっていたころの葛藤や、そのために取り組んだことをいろいろ思い出す。
人は、いつでも変わることができるのか、成長できるのか。この年になってそんなことも問いかける。人とつながったり、支え合ったり、議論しあったり。自分には、いろいろあって、そういう点では弱さが多すぎる。なんて、自己表現がへたなのか。だけど、そんなことができる人間になれればと願う。だけど、なかなか難しいことも多い。自己責任にもすぐからめとられる。だけど、だからこそ、自分がやってきたことも、いろいろ考えたいとも思ったりする。「ダメな親、未熟な専門家でいいじゃないか」――その言葉の意味をかみしめたいものでもある。きっと、どこかでお会いする機会もあるだろうし。じっくり話をお聞きしたいと思う。
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