日露戦争と大韓帝国 日露開戦の「定説」をくつがえす
前作に続き、かなり刺激的な一冊だ。日露戦争は「祖国防衛戦争だった」という司馬史観的なものだけでなく、日本の日露戦争理解は、実は、軍がつくった戦史をもとにしたものが多い。近年、それをさまざまな資料が発見されて覆されているのだけれども、著者は、近年公開された『極秘明治三十七八年海戦史』ほかの膨大な新史料を綿密に読み込んで、その修正をはかっている。それがまたすごいのだ。
明らかにされる日露開戦に向けた日本の戦争準備。日本では平和主義者のように見られている伊藤博文も含め、いかに開戦に肯定的で、前のめりであったかも明らかにされている。韓国政府が、日露間の中立を保つために、打った手立ても踏みにじり、開戦当初の軍事行動から、日露戦争が日本の韓国侵略の野心によって、日本によって引き起こされた侵略戦争であったことも見えてくる。開戦の発端、そこにいたる開戦誘導、その準備の周到さ…。だけど、おもしろいのが、開戦前後の作戦の中心になった海軍の通信戦略。当時のハイテクによる情報戦において、海軍が、開戦の一ヶ月も前から、本拠地である佐世保から韓国南岸に極秘裏に海底電線を敷設し、日本の最初の武力行使は、韓国の鎮海湾と電信局の占領であった。これにより、「日本海海戦」においては、無線と有線を組み合わせて朝鮮海峡の戦略的封鎖網を構築することができたという指摘。そのためにリヤンコ島を日本領に組み込むことを閣議決定し、名前を「竹島」としたなどなど。その後、対抗する軍事力を持てなかった大韓帝国が、国際法に則り日本の不法行為を国際社会に訴え続けていたわけであるが。結果として、韓国は日本の植民地となっていく。これが日露戦争だ。
膨大な資料は、歴史の欠落を埋めていく。従来にない資料の解読が提起され、まさに日露戦争に対する見方を変えることを迫る一冊だけに、学問的なレベルでも、精緻で、活発な議論を望みたいところなのだけれども。なかなか、書評は見ないのが残念。議論はこれからと言うことなのかなあ。こうした問題への関心は薄いのかなあ?
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