〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機
福祉国家構想研の4人の共同代表による共著だけど、本の半分は渡辺治さんによるもの。安倍内閣の政治構造と政治過程の分析、さらには、軍事大国化と解釈改憲のねらいと動向、新しい段階に入った新自由主義改革を全面的に分析する。安倍内閣については、復古的な、異様な暴走内閣という評価がある。だけど、日本の支配層が年来求めてきた、軍事大国化と新自由主義を一気に実現するという大きな枠組みがある。そのことをあきらかにしつつ、同時に、なぜ安倍内閣なのか、安倍政治なるものだから実現でき、特異さがあることも事実。そのことを「大国への執念」という言葉であらわす。なかなか、いいあんばいで、意味深い。そこにこそ、この政権の危険と矛盾がある。
そのねらいは全面的、渡辺さんの新自由主義分析は、なかなか全面的で、あらためていまの日本がどういう位置にいるのかを考えさせてくれる。これをうけ、岡田さんの論文で、国家戦略特区による「岩盤規制」の撤廃の問題、農政改革と農協・農業委員会体制の実質解体、大学の「ガバナンス改革」と自治破壊、地方制度改革にせまっていく。いまなぜ、地方創生なのかがよくわかる。後藤さんのうけもちは、医療と雇用。グローバル競争に食い込まれ、競争に打ち勝つための改革としてたちあらわれる。それが皆保険体制の解体と労働移動強制だ。そういう新自由主義改革の、新たな段階の特質と危険を明らかにしながら、最後の二宮論文で、グローバル競争国家化なる方法が、外需依存・投資主導型成長戦略にすぎず、日本経済を衰退に導いて行かざるを得ないそういう致命的なものであり、国民からの反撃を受けざるを得ないその必然性をみごとに明らかにしてくれる。
読んでいて、迫力を感じさせる。筆者たちの強い思いであるのだと思う。ほんとうに政治の大きな転換をはかるべき、そういう時期として、われわれは安倍内閣に対峙しているということなのだと思う。
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