戦場からの恋文
太平洋戦争中、戦地フィリピンから、郷里へ残した妻へ「恋文」を送り続けた軍人がいた。その軍人とは、岐阜県中津川市出身の青山泉陸軍大尉(戦時中は中尉)。妻・青山フユさんは、受け取った手紙とはがき計約140通を大切に保管し、さらに一字一句すべてをノートに書き写した。夫婦に子どもはなかったが、高校教諭だったフユさんは、戦死した夫の「恋文」を心の支えに、生徒に対して実の母親であるかのような愛情を注ぎ、1999(平成11)年90歳の天寿を全うした…。 昨年11月11日付「中日新聞」朝刊一面で報じ、読者から大きな反響を得た、戦時下に交わされた夫婦愛の記録を本にまとめました。全書簡から56通を精選。東京大学名誉教授の宮地正人氏の詳細な解説を巻末に付けました。 今年も巡りくる暑い夏に、戦争で引き裂かれながらも互いへの思いやりで強く結びついていた夫婦の姿を通し、あの戦争とは何だったのか、改めて問いかける一冊となっています。
ちょっとしたきっかけで、読んだ本。レイテ、ミンダナオ。フィリピン戦線におくられた兵士の手紙の本。そこでも、兵士たちは棄てられ、餓死と戦病死で命を落としていった。
誤解を恐れずに言えば、戦争にいたる日本社会のあり方は、一路、暗黒であったわけではない。さまざまな知的営みがあり、精神的な営み、愛情の交流などがあった。しかし、そういう営みを、あの無謀な侵略戦争が、奪っていった。そのことがよくわかる。
と、同時に、棄てられた兵士のありようもまた、あの戦争とは何であったのかを示す。植民地支配をした太平洋諸島は当初は、平穏なところが多かった。そこで、こういう手紙の営みが存在したのだろう。それだけに、それが棄民へといたる経緯を知る上でも、いろいろ考えさせられるものになっている。
結局、侵略とはどういうものだったのか、あの戦争は、兵士にとっても、日本国民にとってもどういうものだったのか。そういうことを問いかけているのだと思う。
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