もうひとつの約束
昨日の夜、中野で、この映画の一日だけの上映会があったので、見に行ってきた。
江原道・束草(ソクチョ)のタクシー運転手、ハン・サング(パク・チョルミン)は妻と2人の子供と、平凡ながら幸せな家庭を築いていた。娘のユンミ(パク・ヒジョン)が韓国随一の企業、ジンソン電子の半導体工場に就職したことに、家族も誇らしげだ。ところがほどなく、ユンミの体に異変が現れる。ジンソンの社員が見舞金を手に一家を訪れ、辞職願と労災申請放棄の覚書にサインを迫る中、ユンミは22歳の生涯を閉じる。病名は急性骨髄性白血病。
サングは労災を申請するが承認されず、労務士のナンジュ(キム・ギュリ)と共に、被害者を集め提訴に踏み切る。ジンソンの執拗な妨害工作に離脱者が相次ぐ中、サングは言う。「絶対にあきらめない。父親だから」——そして裁判は結審を迎える。
この映画にはモデルがある。サムソン電子の半導体工場での労災裁判だ。サムソンは、韓国のGDPの2割を稼ぎ出す巨大企業。そのサムソンの暗部を告発する映画だけに、業界投資家も劇場も恐れ、二の足を踏んだ。一般の人々の出資で映画は製作され、自主上映会運動が巻き起こるなど、社会現象となったという。
映画はたたかった家族の物語となっているが、商業映画としてもていねいにつくられている。とてもおもしろい。だけど、この映画の命は、やっぱりモデルになったたたかいだ。昨日は、そのモデルとなったファン・サンギさんもやってきた。その苦難のたたかいと、思いは普遍的なものとなっていく。そこがすごい。美しい。監督のキム・テユンもやってきた。資金難と、上映妨害のすさまじさは、たたかいの困難とも重なる。出演した俳優やスタッフの勇気にも頭が下がる。
だけど、それで、裁判は一つ一つ勝利を重ねている。かつて、たたかいを描いた日本映画もあったが、いまはどうなのだろうか? トヨタの過労死の裁判の映画なって、ぜひつくってほしいなあ。だけど…。
出演者は、パク・チョルミン、ユン・ユソン、パク・ヒジョン、キム・ギュリ、パク・ヒョックォン、イ・ギョンヨン、チョン・ジニョン、ユ・セヒョン他で。結構、ドラマでみた俳優ばかり。ハンギョレのこの記事がいい。パク・チョルミン「<もう一つの約束>…製作過程も奇跡だった」 エンドロールには、資金を出したすべての人々の名前がまず、並んでいる。
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