最貧困女子
鈴木さんの本は、『家のない少女』から、ずっと読んでいる。『援デりの少女たち』や『出会い系のシングルマザー』を読んで、激しく落ち込んだ。かなりけばい世界のルポルタージュだけど、いわば学問領域や、運動の世界では扱わない、扱いきれない世界を見事に見せてくれる。今度の新書は、著者の思いをかなり赤裸々に語ってくれている。若い女性の貧困の広がりは、たしかに統計のうえでも顕著だ。そして、そのまわりには、セックスワークという事実が存在し、その真中に、「売春」がある。その世界の構造にわけいっている。そして、その世界は、あまりにもせつないのと同時に、やっかいだ。それが実際の姿だ。彼はその姿を「3つの無縁」(家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁)と「3つの障害」(精神障害・発達障害・知的障害)ということで明らかにする。だけど、その実態は、決して可視化されない。これだけ、貧困が問題になっていても、決して、彼女たちに社会は、寛容にはならない。それはなぜか?
同時に、読み終えて、この本がふれないことがあるようにも思った。1つは「売春」をめぐる絶対的な暴力の存在。ボクは、この問題は避けて通れない問題のように思えてならない。そしてもう1つは、こうした問題が、いまになって広がった問題では決してない。たぶん、そもそも存在しつづけているシングルマザーの圧倒的貧困からはじまる、ほんとうに日本社会のなかでつくられてきた女性の貧困、中年から、高齢者にかけて増加するこの貧困もふくめ、構造的な問題である視点。このことも、もっと光が当てられるべきだ。
2つのことを考える。著者はそれでも当事者によりそって、恋活を提起をする。そういう当事者の人間関係によりそう視点。それは大事だ。NHKの女性の貧困のとりあげかたでもそうだけど、なぜ、セックスワークがセイフティネットになってしまうのか。求められるのは安心。そのための、住むところ、暮らしていけるしごと、安心できる人間関係。そのことを考えるとこの問題がコアにありながら、JK産業というすそ野が広がるのが今の社会だ。だけど、なぜそれだけ、広がっていくのか。それが2つめ。それは、こうした問題は、どう考えてもいまさわがせている日本軍「慰安婦」の問題と地続きだ。というか、戦争の時代に、かつての時代におこなわれた女性への行為に向き合うことができない社会のいまなのだ。もちろんていねいに議論は必要だけど。「人身売買(取引)」社会といわれる日本社会のいまがここにあるのだろうけれども。
無力さを感じるけど、決して、無力であってはならないと思う。
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