自民党政治の変容
政治史の本で、久しぶりにおもしろなあと、グイグイ引き込まれながら読んだ。自民党政治の変容を「政治改革」と党のあり方を軸に論じる。こんな問題の設定の仕方ができるのかとうならさられる。小選挙区制導入の歴史をふり返ってみると、そこに徹底した反共という目的があったことは、すぐにわかるのだけど、自民党は、その結成から一貫して労働者が多数になり、労働者の支持を得た左翼政党が躍進することをおそれ、党のあり方の改革の模索を一貫しておこなっていた。当初は、岸などを中心に、集権制をもちながら大衆的な基盤をもつ政党がめざされた、そのためにも小選挙区制がめざされたが、うまくいかなかった。革新の躍進に対して、80年代にめざされたのが、集権ではなく、多様性をもった分権的な政党であり、そのイデオローグが香山健一だったと。非常に、香山の議論への評価が高いのが、そこまでもちあげるかという気はしないではないが、たしかに、香山さんは頭が良かったのだなあとつくづく思うけどね。90年代初頭の「政治改革」が大きな転機になる。橋本改革と小泉政治をへて生まれたのが、集権的で大衆的基盤のない議員政党でいまにいたる。
だけど、90年以降の政治は、いっかんして、集権的な政治によって、右傾化がすすんだように見えるが、ずっとリベラル派が自民党のなかで、大きな力をもっていたことも、わかる。うーん、なるほどなあ。たしかに、いまの安倍政治は、その面は強い。だけど、彼ら自身が最も危惧していた、国民との乖離、つまり大衆的基盤のない状態におちいっていると言える。安倍さんたちは、自民党の再建に、”リベラル”な民主党に対抗して、右翼的な真正保守によって国民の結集をめざしたが、そのそも、そこに大衆的な基盤があるわけではないということ。ここにこそ、安倍政治の最大の弱点があるということか。それでも、なぜそういう右傾化がすすんだのかは、もっと国民の意識との関係で、いろいろ多角的に考えたいところだけど、十二分におもしろく刺激的な問題提起。もちろん、そのことは、ボクらの側についても、考えなければならないことでもあるのだけれどねえ。引き続き、いろいろ読みたいなあ。
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