沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から
この間、沖縄では、70歳を過ぎた高齢者が、戦時中の記憶が急激によみがえり、不眠やうつに悩まされるといことが問題になっている。著者が晩発性PTSDと名付けたそれらの症状の起源に、沖縄戦の過酷な体験があることを明らかにしたのが本書だ。この間、NHKなども特集番組を組んできたし、沖縄の地元紙でも大きく取り上げられてきた問題だ。
本書は、こうした戦争トラウマの問題にとどまらず、近年のトラウマやPTSDの議論などにもふれつつ、著者のトラウマ論を展開する。話は、いわゆる新うつとよばれる非定型うつと、幼児期の親子関係などにおよぶ。こういう心の傷の問題は、自分の体験とも重なることも少なくはないだけど、読んでいてかなりつらくなってくるところはある。が、こうした議論にはいろいろな発見もあるもの。
いずれにしても、あの戦争で、沖縄は「捨て石」とされ、苛烈な地上戦と「集団自決(強制集団死)」を押し付けられた沖縄。その過酷な体験がもたらしたものは、戦後の沖縄にとっても大きな傷になってきたことが浮かび上がってくるし、米軍基地の存在など戦後の沖縄の理不尽な現実、そのことをつくりだしている現在の政治への鋭い告発にもなっている。
戦争と心の傷については、昨年?だったか、野田さんから山西省の調査にさそわれたことがある。体験者の最後の世代の調査ということで、いまから考えれば、無理してでもいっておけばなあと思うけど、現実的にはそれはちょっと無理だった。残念な思いをあらためてもった。
まだまだ、未解明な分野でもあるが、いま戦争や人としての尊厳ということを考えるとき、どうしても解明が求められる分野だけに、とても貴重な議論であることは間違いないと思う。
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