<時流・底流>売れる「嫌韓嫌中」本 若手出版人が「この国考えて」
最近、本屋に行くと、韓国や中国をとにかくバッシングする本が平積みになっていて、とってもいやな気がしていた。どうしても売らんかなになりがちなこの業界の内部から、そのことについて批判的な問題提起をする動きが出てきたのは、とっても嬉しいことだと思う。
Listening:<時流・底流>売れる「嫌韓嫌中」本 若手出版人が「この国考えて」(毎日新聞)韓国や中国を攻撃する出版物が売れている。書店の店頭には、両国の国名に「嫌」「呆」といった文字をかぶせた書籍や、刺激的な見出しの雑誌が並ぶ。こうした風潮に、河出書房新社(東京都渋谷区)の若手社員4人が問題提起を思い立った。「今、この国を考える−−『嫌』でもなく『呆』でもなく」と題した選書フェアを企画したところ、19人の作家や評論家らが協力し、全国100店以上の書店が本を置くことになった。
尖閣諸島など領土をめぐる緊張が起きた2010年ごろから、両国を批判する出版物が目立ち始めた。昨年末からは、安倍晋三首相の靖国神社参拝をめぐる両国の対応を非難したり、韓国の客船沈没事故の対応を冷ややかに語る雑誌記事が相次いで出ている。
こうした中、河出書房新社の編集者の一人が今春、都内の有名書店の壁面に、太平洋戦争での日本を賛美する内容の書籍広告が掲げられたのを見てショックを受けた。「書店を非難できない。送り手が何とかしなければ」と周囲に呼びかけた。文学全集担当、書籍編集、営業といった普段は一緒に仕事をしていない20〜30代の4人が集まった。アンチテーゼではなく「本の豊かさ、多様性、いろんな本の中から問題に気づいたり、考えたりするきっかけを届けよう」と話し合った。
◇18冊選びフェア
担当する作家や評論家に協力を呼びかけた。同社が発行する書籍6冊と、作家・評論家らが推薦する他社発行の12冊の計18冊が決まった。中国や韓国を取り上げた本だけでなく、消費税、生活保護、近現代史、憲法、宗教といった多彩な本がそろった。
作家の星野智幸さんは「企画に救われた思いがした。『嫌韓嫌中』は長い時間をかけて醸成されたものだから、変えるのも長い時間が必要だ。まず現場での現実を知るべきだ」と考えて、弁護士のななころびやおきさんが外国人労働者を描いた「ブエノス・ディアス、ニッポン」を推薦した。
映画監督の想田(そうだ)和弘さんは「怒らないこと」(A・スマナサーラさん著)を推薦した。「出版業界も経済的に苦しいから、売れる『嫌韓嫌中』本に頼らざるを得ないのだろう。だとしたら良書が売れる努力をすることが一番だ。怒りをあおる本が売れ、右も左も人々が怒りに支配された状況への鎮静剤ないし解毒剤になる良書だ」。大貫妙子さんのエッセー集「私の暮らしかた」を推した作家の中島京子さんは「毎日の暮らしの中に『考える』という行為がある。一人一人がそういう『暮らしかた』をしていれば、世の中はそんなに間違った方向へ行かないのではないかと考えました」とコメントした。
◇100書店が参加
5月中旬に全国の書店にファクスで案内状を送り、ツイッターで宣伝したところ、10日ほどで対象書籍を並べることを表明した書店が100店を突破した。ツイッターを見た人が書店に参加を促すこともあったという。担当者の一人は「ぜひ書店に足を運んで、ネットでは目に入らないような、いろんな本を見てほしい」と呼びかけている。
何よりもこういうことを発言できることが大事、必ず共感は広がる。大事、大事。
いっしょにいろいろ考えていきたいものだ。
ちなみに賛同書店名などはこちらに。
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