死者の声、生者の言葉 文学で問う原発の日本
久しぶりに小森さんの本を読んだ。以前から、ずいぶんお世話になっている人。
あの原発事故直後にツイッターに発せられた和合亮一の詩や、川上弘美が発表した『神様2011』を読んだ人は少なくないだろう。ボクもそうだった。本書は、そのほか、いとうせいこう、林京子らの作品、大江健三郎の発言などを読み解く。原発災害という未曽有の事態と犠牲を直視した彼らは、作家としての感性と知性で、何を伝えようとしたのか。表現者としてのその強いメッセージは、いまなお原発ゼロにふみださない日本を問いかける。『神様2011』が描いた世界の問いかけるもの。あらためて、その作家の思索に心をゆさぶられる。
著者はあの3・11を体験し、宮澤賢治や夏目漱石をあらためて読み直し、賢治が「グスコーブドリ」で、漱石が「現代日本の開化」を、問い直す。犠牲という現実がつきつける死者との対話のうえに生きることこそ、未来への希望がある。それが著者の本書にこめた思いでもあるのだと。
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