海自自殺訴訟:いじめ原因と認定 東京高裁
自衛隊護衛艦「たちかぜ」の事件。高裁判決は、完全勝利となった。
海自自殺訴訟:いじめ原因と認定 東京高裁(毎日新聞)海上自衛隊横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」に勤務していた男性1等海士(当時21歳)が自殺したのはいじめが原因として、遺族が国などに約1億5000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は23日、国などに計440万円の賠償を命じた1審・横浜地裁判決を変更し、約7350万円の支払いを命じた。鈴木健太裁判長は海自による証拠隠しを認め、「隠された文書は賠償の判断に影響を及ぼす重要な証拠だった」と指摘。いじめと自殺の間には相当な因果関係があり、自殺は予測可能だったと判断した。
海自は遺族の情報公開請求に対し、乗員190人にいじめの有無を尋ねたアンケートを「破棄した」と回答していた。しかし、1審で国側の訴訟を担当した3等海佐(46)が控訴審で「海自は隠している」と証言。海自がアンケートなどいじめに関する証拠文書の存在を認めて高裁に提出する異例の経緯をたどり、国側が意図的に証拠文書を隠したかどうかが新たに争点となった。
鈴木裁判長は、証拠隠しについて「国側は(アンケートなどの)存在を認識していたと推認するのが相当」とした上で、「開示対象の文書だったにもかかわらず隠した行為は違法」と明確に認定。「原告側はアンケートなどに基づき主張立証をする機会を奪われた」とし、遺族に精神的苦痛は与えていないとする国側の反論を退けた。
その上で、控訴審で新たに提出されたアンケートや、「自殺前夜に1士から自殺を示唆された」とする同僚への聞き取りメモなどを基に、海自が適切に対処していれば1士の状況を把握し、自殺を回避できたと指摘。「1士は暴行や恐喝に非常な苦痛を感じていた。上司の指導によってもそれがなくなることがないと将来に希望を失い、自殺を決意した」などとした。
3佐の告発について、防衛省は12年にアンケートの存在を一転して認める一方、「不適切な文書管理が原因」とする調査結果を発表し、組織的な隠蔽(いんぺい)を否定した。しかし13年7月には、訴訟担当の幹部事務官がアンケートの存在を把握した後に同僚に破棄を指示していたと発表して陳謝した。…
この事件は、海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」に配属された当時21歳の1等海士の男性が04年10月に自殺した事件で、いじめが原因だとして、遺族が国と先輩の元2等海曹に賠償を求めたもの。1審・横浜地裁は元2曹の暴行や恐喝を自殺の重要な原因と認定して、国などに計440万円の賠償を命じたが、「自殺までは予測できなかった」と判断した。しかし、その後、幹部自衛官が、自衛隊が破棄したとしたアンケートが存在することを告発して、大きな展開をみせた。いじめとの関係、その恐喝・暴力的な内容とともに、自衛隊の組織的隠ぺいをもとめるものとなった画期的な判決。
判決をうけて、今年2月にNNNで放送された、「自衛隊の闇 不正を暴いた現役自衛官」というドキュメントを見た。
所属する組織の不正を知ってしまった男が、正義の遂行のため立ち上がった。いじめによる隊員の自殺で自衛隊の責任が問われている裁判。かつて訴訟担当者だった現役自衛官が「重要文書を隠蔽している」と、自らの組織の<不正>を暴いた。「自衛隊が、不利な事実を隠したまま『不正な勝利』を得てしまう」今の生活を失ってしまうかもしれない恐怖と闘いながらの苦渋の決断だった。自衛隊は「文書は破棄した」と説明してきたが、一転。その後、200点もの大量の文書が開示された。今、裁判の流れは大きく変わろうとしている。「私は、組織に対してではなく、法の正義と国民に忠誠を尽くしたい」 今なお、組織に留まり一人、正義のために闘い続ける自衛官の姿を取材した。
想像を超える現職自衛官の勇気あるたたかいに正直、驚いた。
同時に、なぜ自衛隊で自殺が多いのか。なぜ、いじめが広がっているのか。なぜ自衛隊は隠ぺいするのか。まだまだ、明らかにされなければならない課題も多いと思う事件だ。
« 超党派140人超 靖国参拝 例大祭 新藤総務相も再び | トップページ | 【全国学力テスト】 「課題分析で学力アップ」 過去問対策、成果に疑問も »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 自民党総裁選への「現職」不出馬、菅義偉・前首相に続き2代連続…鈴木善幸氏や海部俊樹氏の例も(2024.08.14)
- 『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』と「島守の塔」(2024.07.28)
- 「奥能登に生きる〜2つの過疎の町と震災〜」(2024.07.21)
「平和」カテゴリの記事
- 辺野古「抗告訴訟」 沖縄県が最高裁に上告 「都道府県が司法判断を求められない判決は容認できない」(2024.09.18)
- 自民党総裁選で高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく…読売調査(2024.09.16)
- 「日米軍事同盟・「戦争する国」づくりの新段階」 日米の統制の一体化などなど(2024.09.14)
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
「政治」カテゴリの記事
- 旧統一教会との「関係断絶」調査 総裁選9候補が無回答 全国弁連(2024.09.19)
- 辺野古「抗告訴訟」 沖縄県が最高裁に上告 「都道府県が司法判断を求められない判決は容認できない」(2024.09.18)
- 先住権行使へ共同を 北欧地域の先住民族 サーミの評議会議長が講演 札幌(2024.09.17)
- 自民党総裁選で高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく…読売調査(2024.09.16)
- 「日米軍事同盟・「戦争する国」づくりの新段階」 日米の統制の一体化などなど(2024.09.14)
« 超党派140人超 靖国参拝 例大祭 新藤総務相も再び | トップページ | 【全国学力テスト】 「課題分析で学力アップ」 過去問対策、成果に疑問も »
コメント