自衛隊協力映画 『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで
この本を読んで、ものすごく驚いた。かなり衝撃的。
「自衛隊協力映画」とは「自衛隊が製作で協力する一般劇映画」という意味。たとえば戦闘や災害救援、テロなどをテーマとする映画製作にとって、いまでは、自衛隊の協力は不可欠なものになっている。しかし、その実態は映画の内容によって協力の可否が決められ、協力を条件に内容の変更を迫られる。その見返りがタダと言うこと。そして商業目的の映画であっても自衛隊の協力を通して、結局は、多額の国費が提供されることになる。本書は、自衛隊が製作に協力した劇映画三五作品を分析。その相互依存の実態を明らかにする。
映画産業のあり様から現在の映画作品の問題にせまっていく視点は、映画の出資が多様な産業とむすびつき、映画産業そのものが多角化している現在、いわば新自由主義経済政策に大きな影響をうけているだけに重要だ。そして、その新自由主義がナショナリズムとむすびつく。作品論をとおして現代のナショナリズムの問題にも切り込んでいる。ただ、最後の二章はやや思弁的。映画産業というものが、文化的な政治とのむすびつきが強まりやすい性格があり、そのもとで、ナショナリズムが浸透する。それはそう、しかしその社会的背景については、より慎重に、複合的に分析したもの。ジコチューナショナリズムは、おもしろいけど、そこにどう接近するかは、まだまだ課題が多いなあ。
と、同時に、この映画産業分析は、大事な問題。
先日、山田和夫さんの映画評のことを書いたけど、たしかに山田さんも映画評については、いろいろな議論があるのはそう。だけど、山田さんが確立した映画評の方法として、いまだから光をあてるべき点がたくさんあるのも事実。たとえば、映画産業の動向からの接近というのがその1つだ。この本も、そういう山田理論と無関係ではないとも思うけど。
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