高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか
乾さんたち首都大学東京の研究グループがすすめた都立高校三年の秋から卒業五年目までの七年におよぶ追跡調査やっと、1冊の本になった。継続して若者たちを追うこうした調査は、それまでにはないものだっただけに、多くのことを明らかにしたと思う。ボクも、自分の仕事で、この調査について、何度かとりあげてきた。首都大(都立大)の紀要にも以下のものがある。
都内高校卒業生の進路状況にみる高卒後進路の構造 : 「高校卒業者の進路動向」に関するアンケート調査よりなど
(明日を模索する若者たち:高卒3年目の分岐-「世界都市」東京における若者の<学校から雇用へ>の移行過程に関する研究III-,共同研究)
「新時代」を働き・生きる若者たち:高卒5年目の人生経路 : 「世界都市」東京における若者の<学校から雇用へ>の移行過程に関する研究IV
〈大人への移行〉過程を捉える分析視角の検討 : 「移行の長期化」をめぐる議論を手がかりとして
そして高卒1年目については、『18歳の今を生きぬく―高卒1年目の選択』という本にもなっている。
あらためて今回の本を読んでみると、これまでの報告がその時点での、分析にあてられているのに対し、より通年的に、どのような経路を彼ら彼女らが歩んできたのかがわかり、よりうきぼりになるものも多いように感じた。
もちろんその進路は多様だ。本書では、正規雇用就職者の仕事、若年女性と性的サービス労働、家族を支えるケアワーク、男性のジェンダー、ネットワーク形成・維持、大学生活の構造、調査者と調査対象者のかかわりなど、類型別に若者の姿がおわれるとともに、テーマにもとづいての議論もまされている。個人的に興味深かったのは、性的サービス労働の分析、家族を支えるケアワークの分析など、基本的に十分若者の自立との関係で焦点をあててこなかったものへのとりくみ。そして、大学生活の構造は、就活などに焦点があてられがちな学生の問題に4年間の彼らの生活の中での成長の姿をみる。あとこうした若者に向き合う調査だけに、どう若者と接してきたのかというところもきになるところで、調査社と対象者のかかわりについての分析もおもしろかった。
いずれにしろ、しかし、そこから共通してうきぼりにされているのは、若者の状況の不安定さ、危うさである。そのなかで、仲間やコミュニティに支えられて懸命に生き抜く姿がある。その若者の歩みからは社会のあり方への重い問いかけがあるのだ。乾さんが言うようにいま求められるのは、若者にさらなる試練を課すことではなく、試練を成長にむすびつけられるような手立てだ。若者のがんばりや成長をきちんと評価して承認する、そういう場の形成が、学校でも職場でも地域でも求められている。そういうことをしっかり考えていかなけれなならないと思った。
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