<生活保護と扶養義務>
生活保護改悪に反対する研究者声明呼びかけ人代表の主催でのシンポジウムの第二弾。今日午後から、このシンポジウムに出かけた。
まず、吉永純さんが、「生保における扶養義務と民法」と題して、報告。昨年来、扶養義務が問題になったとき、全国会議が出した見解をもう一度確認していくような話。つまり、民法上の扶養義務というものがどういうものか、どう運用されているのかという問題、さらには民法そのもののもつ問題点から、生活保護法上の扶養というものがどのように扱われてきたのかということ。旧法から新法にかわって、生活保護の資格要件から扶養がはずされたのにもかかわらず、その後の運用は重くのしかかり続けた。それがたたかいのなかで前進してきて、厚生労働省の見解や運用にも大きな前進が生じた。だけど、それがこの間、大きく揺らぎ後退してきた…。
蓑輪明子さんが「家族制度と生活保護 」。これは、もっと大きなスケールでの話。明治の時代の家族制度というものがどういうものだったのかからときおこす。そこから、戦後改革のなかでの憲法のもとでどう変わったか。何がかわらなかったのか。その未完の改革が、その後の戦後史の中でどのように内実化していったのか。そういうスケールの中で今の問題を問いかける。興味深い論点は、1つは新自由主義改革と新保守主義の関係。ボクは、いまの安倍さんの政治は、いろいろな論者が主張するような新自由主義主導とはなかなか言い切れないと思っている。新保守主義は、補完というよりは大きな位置を占めている。むしろもっと行き当たりばったり的複合的。もちろん支配層全体は新自由主義の再起動をねらっているのだろうけれども。新保守主義はありもしなく家族を描く、だけどそれは社会保障と人権をめぐる問題の反転をよびおこす可能性もある。もう1つの論点は、家族像をどう描くのか。社会保障実現を阻むものとしての家族から、家族を支える社会保障へという視点。この点では、家族のなかでの、とくに子どもの問題を支える法体系や、配偶者との家族を支える法体系の構想みたいものが必要だと感じた。
そして最後は稲葉剛さんの「扶養義務と生活保護行政」。先の2人がかなり難しい話に対して、稲葉さんは実践者らしく実態から話す。だけど、その実態が刺さる。扶養義務というが、それが貧困の連鎖の脱却といかに矛盾するのかという問題を、高校生のメッセージを紹介しながら発言。国会での集会のでこの高校生の発言は、ボクも参加して直接聞いたんだよなあ。吉永さんもふれていたけど、印象に残るのは、障害ある人の自立の問題と扶養強化の問題がどう矛盾するかという話。障害者の自立の権利が、このことによってどう妨げられるのかということ。
討論のなかで、きょうされんの型がこの点をかなり強調していた(実は発言者は息子の上司なのだが)。実際には、自立支援法の時点で先取りされていることもあらためて思い出す。すごく印象に残った。
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