虐待・いじめ 悲しみから希望へ 今、私たちにできること
著者は知り合いだけど、この本を読んで、はじめて著者が直面したとてもつらいできごとのことを知った。
この本は、授業でだされた、学生たちのレポートにより構成されている。それは学生自身の、虐待といじめの体験である。もともと、こうした問題と家庭の不安定のもとでの子どもの葛藤との関係は指摘されていることではあるけれども、自分自身が、そういう不安定な家庭で育ち、自分のなかでそのことを十分に総括できていない人間が読むと、そうとうつらい、しんどい本でもある。だけど、かくもいまの若者や子どもたちは、このように広く、育ちのなかでさまざまな傷や悲しみを抱えてきているのかということには正直おどろかされる。それは、少なくないケースで家庭の不安定や困難とむすびついており、その背景は貧困や現在の極端な競争的な社会があることもまた、かなりはっきりした事実なのでもある。
同時に、そこから生きのびた学生たちの語りや、実際のいじめの現場でおこっていたことを観たときに、大人の役割や学校の役割というものも痛感させられる。本書はそこでの支援のあり方をも視野に入れているわけだけれども、その確信はいうまでもなく、共感的な理解にほかならない。それだけに、いまの政策動向にある、教化や管理統制といったものが、子どもたちの傷や葛藤と無縁であるだけではなく、いっそう子どもたちからはなれたものであることも示されることになる。
ほんとうに大人や学校が、子どもに寄り添うことができるのか。正念場であるのだけれどもなあ。
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