教委廃止、首長6割が反対 東大准教授調査
東大の村上さんの調査が、今日の中教審で議論になった。このニュースをクリップ。
教委廃止、首長6割が反対 東大准教授調査(朝日新聞)教育委員会の改革論議について、全国の市区町村長はどう考えているのか――。東大の研究者が調査したところ、現行制度の廃止に反対する首長が全体の6割近くにのぼることがわかった。「制度を変更する必要はない」と考える首長も3割を超えた。22日の中央教育審議会で報告される。
東大教育学部の村上祐介准教授が今年3月、全国の市長、区長全員に加え、町村長の3分の1の計1120人に調査票を送付。6月までに市長457人▽区長19人▽町村長196人の計672人から回答を得た(回収率60%)。
いまの制度を「廃止し、その事務を市町村長が行う」に首長自身「反対」「どちらかといえば反対」と答えたのは58%。「賛成」「どちらかといえば賛成」は11%。「どちらともいえない」は31%だった。
村上准教授は2004年にも同じ調査をしたが、「教委廃止」への賛成は16%で、今回より5ポイント多かった。
一方、教育委員が会議で物事を決める現行制度をめぐり、「維持しつつ、改善を図る」に「賛成」(以下、「どちらかといえば」も含む)と答えたのは57%。教委の権限を弱めて「(方針を決めない)諮問機関とし、教育長を責任者とする」について「賛成」したのは58%だった。「諮問機関」派のうち6割は「現行制度の維持」とも答えている。
こうした結果から、村上准教授は「橋下徹・大阪市長と違い、多くの市町村長は、教育委員の会議について改革の必要はあるが、残すべきだと答えている。教育が政治から一定の距離を置く必要があるとの考えがうかがえる」と話す。
調査では、教育の課題ごとに首長がかかわるかどうかも尋ねた。少子化で各地で進む「学校統廃合」について「関与すべきだ」と答えたのは83%、「学校でのいじめ問題への対応」は56%なのに対し、東京都、大阪府・市で問題化した「国旗・国歌の問題」は37%、東京都、大阪府、神奈川県でこの夏、問題になっている「教科書採択」は11%にとどまった。
首長から見た教育行政の現状についても尋ねた。教委が一般行政から独立していることが首長自身に制約になっているかについては、「思う」「どちらかといえば思う」と答えた人が計23%。これに対し、「思わない」は倍の51%だった。教育委員が会議を開いて決めるから事務が遅れがちだと「思う」は14%。「思わない」が4倍以上の62%にのぼった。市区町村長は、今の教委をあまりネガティブにとらえていない様子だ。
意外なほど、首長は抑制的。
「首長が何もかも自己の決定権の下に置くべきだとする改変は疑問。首長の『過信』に基づくとも感じられる『万能感』による教委への過度の関与には『危うさ』を感じる」
「先生が首長の号令一下、右顧左眄(うこさべん)するような雰囲気では、信頼ある安定した教育は望めない。そのためにも安定的な教育委員会制度が必要」
「教育委員は教育方針を示しながら選挙で選任するのが妥当。理想の教育行政を展開すべきだ。定員も10人くらいであってもよい」
「行政課題は首長が国の関係機関と意見交換して、どんどん改善されている。しかし、教育分野については首長が制度的に関与できないから『60年1日の如く』」
「一部の教育委員会の運用・対応のまずさがクローズアップされすぎ」
「政治、経済が必ずしも安定していない現状で感情的な議論にならないように」
「戦後レジーム(体制)からの脱却を目指し、教育制度改革を一気に進めようとする考え方は危険。幅広い国民の声や住民主体の議論に基づいた制度改革でなければならない」などの自由記述があったそうだ。
もちろん、首長はいまのままの教委がよいとは思っているわけではない。「維持しつつ改善」「諮問機関で教育長を責任者に」の首長はそれぞれ57,58%もある。村上さんは「教委は改革の必要はあるが、残すべきだと思っている。教育が政治から一定の距離をとる必要があると考えている様子だ」と言っている。
だけど、首長が関与すべき課題については、「統廃合」は83%、「いじめ問題」は56、「国旗・国歌」は37%、「教科書採択」は11%。これも注目すべき。
何を議論すべきか。よくよく考えたいもの。論点をしっかり整理しないとなあと思った次第。
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