終わらない戦争
金東元(キム・ドンウォン)監督のドキュメンタリー映画を見る。〈オランダ〉ジャン・ラフ・オハーン/〈フィリピン〉フェリシダッド・デ・ロス・レイエス、ピラール・フリアス/〈中国〉韋紹蘭(ウェイ・シャオラン)/〈韓国〉李秀山(イ・スサン)という5人の被害者と羅善学(ルオ・シャンシュエ、韋紹蘭の息子)/パク・ウォンギル(李秀山の息子)
の映画。日本軍「慰安婦」の被害を重層的に追った作品。いや、やっぱり凄かった。
朝鮮半島で、だまされて連れて行かれた被害者だけではなく、中国やフィリピン、インドネシア、オランダ人の被害も追う。その被害の規模にもあらためて驚かされるのだ。
と、同時に、彼女たちがその戦後のなかで受けた困難や苦しみは想像を絶するものだったことにもあらためて考えさせられる。そして、声をあげた!
教育のつどいで、教科書の記述が問題になったとき、被害か書かれる大きな要因は「近隣条項」だという発言があった。もちろん、近隣条項の意義について否定する気はない。だけど、日本の歴史認識に大きな影響をあたえたのは、そういう外交問題だけではなく。とくに、80年代後半以降の被害と当事者のその支援者のたたかいの持つ意味は大きい。実際に、被害の実相が、歴史研究のレベルでも格段とその調査がすすんだのも、その時期なんだから。「慰安婦」問題にしても、ほんとうに実態が明らかになりはじめたのは、ごく近年ことである。金学順さんの91年の証言が契機だ。そのあたりのことについては、交流会で、少し発言したりしたのだけど…。そういう人々のとりくみに無関心であれば、歴史の事実から遠ざかる。まだまだ、被害そのものと、戦後の歩みについて、自覚的な人たちのあいだでも、多くのことが知られていないのも正直事実なのだと思う。
そういう意味でも、いまだからこそ、この映画は必見だな。
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