従軍作家たちの戦争
日中戦争の時代、『麦と兵隊』で国民的作家になった火野葦平が克明に記した20冊もの従軍手帳が北九州・若松に遺されている。この程、全貌が明らかにされ、陸軍報道部を中心としたメディア戦略が浮かび上がってきた。当時、中国の蒋介石政権は日本軍の残虐行為を国際社会に訴えていた。のちに陸軍報道部長となる馬淵逸雄は、これに対抗するため、火野を報道班に抜擢。徐州作戦に従軍させ、「兵隊3部作」はベストセラーとなり、映画化もされ、戦意高揚に貢献する。さらにペン部隊が組織され、菊池寛、林芙美子ら流行作家が参加していく。 太平洋戦争が始まると、火野はフィリピンで宣撫工作に従事し、大東亜文学者会議をリードしていく。しかし、実際に火野が目にしたのは過酷な戦場の現実だった。戦後、戦争協力で批判された火野は、自ら命を断った。作家を戦争に動員した軍のメディア戦略と火野葦平の軌跡を初公開の従軍手帳や関係者の証言から描く。
石川達三の「生きている兵隊」が、南京事件を記録したのに対し、陸軍がメディア操作を強める。そのなかで、従軍作家として活躍したのが火野葦平。彼が書いたことと書けなかったこと…。戦時中から抱えていた葛藤。
ボクは、火野を評価もしないし、同情もしない。だけど、戦後、こういういわば戦前、思想的なレベルでは、戦争推進勢力と同じところにいた人たちが、戦後もずっと抱え続けた葛藤。それがある意味では、日本の戦後の平和と戦争意識の特質ではないかとも思う。少なくとも、「靖国」派というか、いまの安倍さんたちの議論は、そういう人たちの葛藤を踏みにじり、押し流してしまうものだと思った。
前提の問題として、現在の言論・表現の自由をめぐる状況は、よくよく考えないといけないとも。
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コメント
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初めまして。
石川達三「生きている兵隊」が中国で翻訳されていたことは、この番組で初めて知りました。
そしてその効果は高かったと証言する中国の人の話も納得です。
もう一つ、火野が戦後に「麦と兵隊」などに戦時中かけなかったことを加筆して、それをもって完成稿としたことも考えさせられました。
投稿: 土佐高知 | 2013/08/15 09:40