幸せの戦後史
本の帯には、「豊かさと信じたものは、果たして何だったのか。戦後、人は何を求め、生きてきたのか。家族・自己・労働に焦点を当て、歌、映画、小説から仕事、暮らし、性、さらには宗教、アニメまでを題材に、60余年の社会意識の変遷を追う」とある。現在社会は、変容し、とかく個人化の時代といわれる。社会構造という大きな物語は終焉し云々と。だけど、現実には、個人の個化された生活は社会の実際にありようとは無関係でいられるはずがない、つねに社会も対置された形でわれわれは生きている。そこで、問いかけられるのがその社会をどう認識するのかという問題でもある。この本が、読んでいて、いろいろ考えさせられるのは、そういう社会の構造的なあり方が、きわめてするどく反映している、雇用や家族という問題から論じていることだ。流動化する雇用、解体する家族のもとで、人はどう生きるのか。そこでの自己をどう考えるのか。かけど、それは示唆だけにとどまる。多分に社会意識にこどわる著者は、その向こう側にある社会構造とむすびつけて論じはしない。文化のうちの社会意識の議論は、ときには、きわめて思弁的、観念的な議論になっていくのだけど。だけど、それでも、この本は、戦後史を書くことをとおして、いまの日本社会のあり方を問いかけている、そういうところが魅力であり、おもしろい。聞きなれた音楽や、思い出深い映画のシーンとともに。
あらためて、戦後史をやってみたいと思う。これから自分がやる仕事のなかで、本格的な戦後史をやることで、今の社会を問うことができればどれだけ、すてきだろうと思うなあ。
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