幸せの戦後史
本の帯には、「豊かさと信じたものは、果たして何だったのか。戦後、人は何を求め、生きてきたのか。家族・自己・労働に焦点を当て、歌、映画、小説から仕事、暮らし、性、さらには宗教、アニメまでを題材に、60余年の社会意識の変遷を追う」とある。現在社会は、変容し、とかく個人化の時代といわれる。社会構造という大きな物語は終焉し云々と。だけど、現実には、個人の個化された生活は社会の実際にありようとは無関係でいられるはずがない、つねに社会も対置された形でわれわれは生きている。そこで、問いかけられるのがその社会をどう認識するのかという問題でもある。この本が、読んでいて、いろいろ考えさせられるのは、そういう社会の構造的なあり方が、きわめてするどく反映している、雇用や家族という問題から論じていることだ。流動化する雇用、解体する家族のもとで、人はどう生きるのか。そこでの自己をどう考えるのか。かけど、それは示唆だけにとどまる。多分に社会意識にこどわる著者は、その向こう側にある社会構造とむすびつけて論じはしない。文化のうちの社会意識の議論は、ときには、きわめて思弁的、観念的な議論になっていくのだけど。だけど、それでも、この本は、戦後史を書くことをとおして、いまの日本社会のあり方を問いかけている、そういうところが魅力であり、おもしろい。聞きなれた音楽や、思い出深い映画のシーンとともに。
あらためて、戦後史をやってみたいと思う。これから自分がやる仕事のなかで、本格的な戦後史をやることで、今の社会を問うことができればどれだけ、すてきだろうと思うなあ。
« 重重 中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の物語 | トップページ | 改憲議席3分の2をめぐって »
「読書」カテゴリの記事
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
- 木原稔防衛相、終戦の日に靖国神社に参拝 韓国「時代錯誤的」と反発 :「ニライカナイには行けない」(2024.08.15)
- 9月号ができています(2024.08.12)
- 『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』と「島守の塔」(2024.07.28)
「政治」カテゴリの記事
- 「日米軍事同盟・「戦争する国」づくりの新段階」 日米の統制の一体化などなど(2024.09.14)
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 赤旗日曜版にJCJ大賞 自民派閥の政治資金不記載(2024.09.09)
「経済」カテゴリの記事
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 赤旗日曜版にJCJ大賞 自民派閥の政治資金不記載(2024.09.09)
- 河野大臣「自由に働き方を決められる制度が大事」 希望者には“勤務時間の上限廃止”も 働き方の規制緩和を表明(2024.09.05)
- 小1の不登校が2年で倍増 「幼・保・小」の連携で対応(2024.09.01)
「歴史」カテゴリの記事
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 関東大震災の朝鮮人虐殺、否定論やまず 公的記録、相次ぐ「発掘」(2024.08.30)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
コメント