「ゼロ」の裏 浮かぶ課題 横浜待機児童「解消」
昨日のニュースでも、これはもちきりだったけれども、やはりこれはいろいろ考えさせられるのだけど。
「ゼロ」の裏 浮かぶ課題 横浜待機児童「解消」(東京新聞)保育所に入れない待機児童が三年前の全国ワーストから、四月一日でゼロになったと発表した横浜市。保育所の民間参入などでゼロを成し遂げ、国も他の自治体に民間参入を促す。だが、専門家は民間頼みの危うさを指摘。ゼロ~一歳児の認可保育所の広さは国基準を下回るなど、質の確保には課題が残る。
厚生労働省によると、昨年四月時点で株式会社運営の認可保育所は全国で三百七十六園。うち横浜市は全国最多の百十二園に上る。今年四月一日時点では百五十二園に増え、市の認可保育所の四分の一を占める。
市は十年ほど前から市立保育所の民営化を進めてきた。林文子市長も民間を積極的に誘致。市保育対策課の佐藤英一課長は「企業の協力も待機解消につながった」と説明する。
市の民間活用方式を国も評価する。厚労省は今月、全国の自治体に株式会社の参入を促す通知を出した。同省の担当者は「スピード感ある整備につなげてほしい」と話す。
だが、急激な民間参入の流れに、明星大学の垣内国光教授(児童福祉)は「国は手っ取り早く待機児童を解消したいのだろうが、質を担保するべきだ。保育を営利事業としていいのか」と異を唱える。
保育士の入れ替わりの激しさが目立つことも懸念し、「決算書の公開や、親の園内見学で透明性を高めることが必要。行政の監視も欠かせない」と指摘。横浜市は四月から条例で民間の認可保育所に外部評価を義務付けたが、五年に一回という。
さらに、ゼロ~一歳児について市は認可保育所に、国の基準以上の子どもを入所させる独自の運用をしている。国の面積基準では、はいはいする前は一人一・六五平方メートル、はいはいし始めると同三・三平方メートル以上を確保しなければならない。
子どもは生後八カ月前後ではいはいを始めるため、受け入れ当初から三・三平方メートルを確保しておかなければ違反状態になる。だが、いくつかの自治体は誤って解釈し、横浜市もゼロ~一歳児の面積を一律に二・四七五平方メートルで認可してきた。
愛知県碧南市では基準未満の詰め込み保育が一因で死亡事故が起き、厚労省は一昨年、三・三平方メートルの基準を徹底するよう全国の自治体に通知。横浜市は四月、本年度以降開設する認可保育所は国の基準を守るが、既存の保育所は低い基準のまま運用できるとする市条例を制定した。
このニュースを聞いて感じたことがいくつかある。
1つは、認可保育園の建設はその気になれば大幅に前進することができるという問題。これはボクが住んでいるところでもそういう実例になっているわけだけれども、周辺自治体で言えば、土地などもないわけでない。だけど、この横浜のケースでは、カウントされていない待機児が膨大に存在することは看過できない。いつも待機児問題では、統計上のあいまいさやとりトリックなどがくりかえされる。
2つめに、株式会社の参入が増えているが、これはきちんと検証すべき問題がいろいろあるのだろう。もともとの疑義などもブログで書いたりしたが、実態として、どうなっているのか、調査がまたれる。
第3に、やはり最低基準そのものは決して崩してはいけないということ。と同時に、この基準そのものが、かなり、世界的に見ても劣悪である可能性が高いという問題があるということは忘れてはいけない。ここには横浜の大きな課題があることは言うまでもない。
4番目に、そもそも保育要求をめぐっては、入れる入れないの保活問題が深刻なわけだけど、使い勝手や、安心安全、働きやすさなどいろいろな面で、不満や切実な要求があったことも事実。基準や制度そのものの点検や改善も迫れている。なによりも、保育士が安心して働け、その力量をあげていくような制度的保障がなく、圧倒な非正規の状態にある問題は深刻。これで、子どもが安心して生活できるのかは問われている。
5番目に、と同時に、子どもをあずける家庭だけでなく、そうでない家庭も含め、この子育て世代は経済的な困難がひろがっていて、切実な要求がいっぱいあるということ。働いている場合も、ダブルワークや劣悪な労働条件などの実態もある。そういう状況下の子育てへの支援という点で、十分なのかという視点もあらためて必要な気もする。投げかけている課題は広く、深いのではないのかなあ。
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