ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて
もうずいぶん前に買っていて、パラパラと眺めてほおっておいた本。この間のヘイトスピーチの問題もあり、ちゃんと読まなければと思って、もう一度手にとって見た。
この間のヘイトスピーチの問題を、ボクはやっかいな問題だなあと感じていた。もちろんレイシズムの立場を全面に出した、ああした行動は決してゆるされないし、そのことを正面から批判しなければいけない。そして、そういう攻撃の対象とされた人たちとの連帯というのは、決定的に重要な時期に来ている。だけど、やっかいだと思うもう1つの問題は、そうした背景にある時代のいわば「気分」だ。そんな問題もふくめ、ていねいに取材している。そこで、わかるのは、在特会など彼らは決して、理解されること、支持されることなの何ものぞんでいないのだと。一方で、時代の「気分」は確実に形成されている。それは一体何なのか。
この本では、在特会からの支持者の離反は相次ぎ決して支持が大きく広がることはないことを明らかにしている。だけど、なぜ在特会なのか。この点について、求めるのは絆であり、承認欲求であり、そして格差と貧困の広がりの中での特権的な政治社会へ憤りだと言う。それをよびさますネット社会のありようにも注目している。たぶん、それは半分あたっている。だけど、ボクは読んでいて、もう少し長いスパンでの政治や社会の変容をダブらせながら考える必要も感じた。時代の「気分」の変化はいつからはじまったのだろうか。おそらく80年前後から、少しずつその歩みをはじめていたのではないのか。そこから考えるべきことは、より重層的でより多面的な課題があるようにも感じる。その時代を生きていた人間として。
いま、いろいろなことが起こっている。政治意識も流動化しているが、その流動化のなかで、もどかしい枠組みみたいなものも感じていることは事実。そういうなかで、本来掲げるべき「進歩」だとか、「人権」とかいうものが、あたりまえのように息を吹き返すというか、新しい社会のイメージとして浮上するには、いま何が問題なのか。もちろん今起こっている人権の侵害に正面からたちむかうことだ。そしてそれを分厚い社会の共通認識にすること。だけどそのためには、この本でも描かれているような、現場にただよっている「生きづらさ」みたいなものから出発して、答えをみつけることもまた、たぶん必要なんだと思った次第だけど。
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