砂川事件:米に公判日程漏らす 最高裁長官が上告審前
アメリカの公開文書で、また新しい資料が。
砂川事件:米に公判日程漏らす 最高裁長官が上告審前(毎日新聞)1957年夏、米軍の旧立川基地にデモ隊が侵入した砂川事件で、基地の存在を違憲とし無罪とした1審判決(59年3月)後、最高裁長官が上告審公判前に、駐日米首席公使に会い「判決はおそらく12月」などと公判日程や見通しを漏らしていたことが、米国立公文書館に保管された秘密文書で分かった。1審判決後、長官が駐日米大使と密会したことは判明しているが、基地存在の前提となる日米安全保障条約改定を前に、日本の司法が米側に図った具体的な便宜内容が明らかになったのは初めて。専門家は「憲法や裁判所法に違反する行為だ」と指摘している。
布川玲子・元山梨学院大教授(法哲学)がマッカーサー駐日大使から米国務長官に送られた秘密書簡を開示請求して入手した。
書簡は59年7月31日にレンハート駐日首席公使が起草。田中耕太郎長官に面会した際「田中は、砂川事件の最高裁判決はおそらく12月であろうと考えている、と語った」「彼(田中氏)は、9月初旬に始まる週から、週2回の開廷で、およそ3週間で終えると確信している」などと記している。
実際には、公判期日は8月3日に決まり、9月6、9、11、14、16、18日の6回を指定し、18日に結審。最高裁大法廷は同年12月16日に1審判決を破棄、差し戻した。
書簡はさらに、田中長官が「結審後の評議は、実質的な全員一致を生み出し、世論を揺さぶるもとになる少数意見を回避するやり方で運ばれることを願っている」と話した、としている。60年の日米安保条約改定を控えた当時、米側は改定に反対する勢力の動向に神経をとがらせており、最高裁大法廷が早期に全員一致で米軍基地の存在を「合憲」とする判決が出ることを望んでいた。それだけに、田中長官が1審破棄までは明言しないものの「評議が全員一致を生み出すことを願っている」と述べたことは米側に朗報だったといえる。
布川氏は「裁判長が裁判の情報を利害関係のある外国政府に伝えており、評議の秘密を定めた裁判所法に違反する」とコメントしている。
また書簡では、砂川事件1審判決が日米安保条約改定手続きの遅れにつながっているとの見解を日本側が在日米大使館に伝えていたことも明らかになった。書簡は情報源について「(日本の)外務省と自民党」と記している。……
新原さん、末浪さん、布川さんと、砂川事件・伊達判決をめぐる顛末。その新しい資料。新聞によって、関心のおきどころはちがう。赤旗は、砂川事件1審判決が日米安保条約改定手続きの遅れにつながっている点に注目している。
末浪さんの発見した資料では、59年11月5日にマッカーサーと田中長官の密談で、米軍駐留「合憲」を話し合ったことが明らかにされてきたけれども、今回のは、それ以前に後半の日程を決める段階から、こういう日米での協議があったことをうかがわせる。アメリカはその狙いを「最高裁が1審の違憲判決を覆せば、安保条約への日本の世論の支持は決定的になるだろう」とあけすけに語っている。
対米従属の底の深さを見せつける資料だと思う。
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