発信箱:可視化する努力=大治朋子(外信部)
今日の毎日新聞の、大治さんのコラム(?)
発信箱:可視化する努力=大治朋子(外信部)(毎日新聞)「沖縄は基地で食っているかのように思われがちですが、そうではありません」。専修大学で先月開催されたシンポジウムで、沖縄・琉球新報の普久原(ふくはら)均・編集局次長が強調した。
その言葉を聞いて、ちょうど1年前の2月5日、琉球新報に掲載された社説を思い出した。当時の防衛相が「(沖縄の)現状は基地があることによって一つの大きな経済規模が生まれている」と発言したが事実誤認であり、新聞を読み勉強してほしい、と皮肉交じりに書いていた。
社説が引いた沖縄県のデータによると、08年度の基地関係収入は2084億円で、県民総所得に占める割合は5.3%。観光収入(4299億円)の半分以下だった。沖縄が本土に復帰した1972年当時の基地収入は県民総所得の15.5%を占めていたが、それから状況は大きく変わっているという。
県議会事務局が10年にまとめた試算でも、基地が存在することによる逸失利益は年間約5000億円。在沖米軍基地が全て返還された場合の経済効果は現状の2.2倍だという。
イメージというものは、明確な根拠がなくても妙に心にまとわりつく。だからこそ、危険でもある。
琉球新報は11年元旦から70回にわたって続けた長期連載「ひずみの構造−−基地と沖縄経済」で、こうしたデータを丹念に集めて検証した。連載は同タイトル(新報新書)で昨年8月、刊行されている。
「沖縄は基地経済に依存している」。そんな思い込みに、我々はとらわれていないか。ぼんやりとしたイメージに「本当にそうか」と問いかけ、数字やデータで実像を可視化する。その努力なくして、本当の議論はできない。
多くの人から、見えないものが多く、そのために多くの人が、社会認識のうえで、誤謬をしていて、それがいまの政治をつくっているのならば、その見えないものを可視化して、社会認識の誤謬を正すことこそが、ボクらの仕事じゃないかと、痛烈に考えさせられる。ボクは、どれだけのことを知らせている、どれだけの発信ができているのだろうか?
新報の連載は、半分ぐらいは読んでいるけど、本になっていたのかあ。知らなかったと、『ひずみの構造−−基地と沖縄経済』をすぐに沖縄の書店さんに注文。ジュンクにはありそうだな。だけど、なかなか行けないし。
« 戦後教育の記録8万点 読谷村へ | トップページ | 「早期帰還」に難色が9割 双葉町民へ復興庁調査 »
「平和」カテゴリの記事
- 「外国人優遇」はデマ 参院選で広がる排外主義に複数団体が反対声明(2025.07.08)
- 前衛8月号ができています。(2025.07.07)
- 歴史学者が憂える政治家の認識 歴史修正主義に甘い日本(2025.07.02)
- 「被害証言に高度の信用性」米兵による性的暴行の事実認定 那覇地裁が懲役7年判決「生命の危機が生じかねない」(2025.06.25)
- 沖縄戦を指揮した牛島司令官の辞世の句、日本軍中央が改ざん 沖縄での劣勢報告も 本土決戦へ戦意高揚狙う(2025.06.22)
「メディア」カテゴリの記事
- 検証 フジテレビ問題(2025.07.06)
- 体験談を積み重ねて見いだした「軍隊は住民を守らない」 平和教育の専門家、西田氏の「謝罪」による沖縄ヘイトを危惧(2025.05.10)
- 自民・西田議員、「歴史の書き換え」発言を削除 「非常に不適切だった」と沖縄県民に謝罪(2025.05.09)
- 「玉木首相」なら即解散? 「地下アイドル」脱した党首が目指すもの(2025.04.29)
- NHK 「ETV特集」再放送延期&配信停止は「取材を深めた上で、改めてお伝えしたい」(2025.04.19)
「政治」カテゴリの記事
- 日本に「排外主義」が広がった?否定した研究者が求める外国人政策(2025.07.18)
- 学習塾代が高騰、難関校狙う高所得層が押し上げ 中小淘汰で倒産最多(2025.07.17)
- 追いつめられる子どもたち 「あなたががんばれ」が生んだ緊張と不安(2025.07.15)
- 世界を操る「あの勢力」…ライトな支持層は知らぬ参政党の歴史観(2025.07.14)
- 市議選開始! 「世取山著作集出版記念会」(2025.07.13)
「沖縄」カテゴリの記事
- 博士課程への生活費支援「日本人に限定・留学生は除外」が国益を損なう理由。そもそも“給与が出る”世界のスタンダードから日本は劣後(2025.07.10)
- 「被害証言に高度の信用性」米兵による性的暴行の事実認定 那覇地裁が懲役7年判決「生命の危機が生じかねない」(2025.06.25)
- 沖縄戦を指揮した牛島司令官の辞世の句、日本軍中央が改ざん 沖縄での劣勢報告も 本土決戦へ戦意高揚狙う(2025.06.22)
- 那覇市議、疎開記述に誤りがあると持論 対馬丸記念館の展示に 館長「間違っていない」(2025.06.12)
- 前衛7月号ができています。(2025.06.09)
コメント