教室内(スクール)カースト
むかし、スクールカーストのことを知りたくて、だけど『12人の悩める中学生』という小説は苦しくって、読みとおすことができなくて、子どもに読んでもらって感想を聞いたことがある。以前にもブログに書いたことがあると思うがそのときに彼の感想は、「こんな生易しいものではない」というものだたった。それぐらい、学校のなかでもこの「地位」はそこで生きる子どもたちをしばり、差別や支配を貫徹させている。いじめといじりの連続性が、この間のいじめの問題でも主張されているけれども、こうした人間関係のありようが、いじめの一つのベースになっていることは否定はできない事実でもある。下位のものには場合によっては大きな傷をあたえ、上位のものにもさまざまなしんどさを感じさせている。そういったスクールカーストの現実について、当事者からの聞き取りをもとにかなりリアルに明らかにしていると言える。だけど、ほんとうにやっかいであり、不思議なものでもある。
だけど、教師までもを巻き込み、むしろそれを利用することで、このシステムを補強している現状の指摘にはあらためて驚かされた。しかし、なぜこうしたことがおこるのか? そのメカニズムみたいなものはわかっても、なぜおこってしまうのかはこの本では解き明かされているわけではない。それは、もちろん、このスクールカーストが、権力と能力の問題として解釈されているのならば、学校における権力の構造、能力をめぐる政策の動向、さらにはこれらが社会全体とどうかかわっているのかということと推測はされるわけだけれども。ただ、こうしたことが受け入れられ広がる学校や現在社会の文化状況というものは、単純ではない感じもするのでもあるが。彼らを包み込む学校・社会。うーん。
「かわらないもの」という受けとめを彼らはしている。その閉塞感というものがとても気になることでもある。いわば権力をめぐる問題が、固定化されたもの、きわめて自分の個人とのかかわりで固定化されたものとして認識されている現状が、その彼の社会認識を形成していくうえでどんな意味をもってしまうのか、そういうこともとても気になったりする。
どうすれば、こうした人間関係を、もっとお互いの人としての尊厳を認め合うようなものに変えていくことができるのか。それはもちろん社会全体のいまのありようとも不可分だし、教室の独自の問題もあるのだろうけれども、とにかく宿題をいっぱい提示していて、ほんとうに、もっともっと多角的に切り込んだ議論と検証の必要性を考えさせられる本でもあった。
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