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2012/11/21

日弁連 「『生活支援戦略』に関する主な論点(案)」のうち、「生活保護制度の見直しに関する論点」の問題点に関する意見書

 今月15日に、日弁連が表題の意見書を発表している。
 生活支援戦略の厚生労働省の検討では、「新たな生活困窮者支援体系に関する論点」という部分では、これまでにない踏み込んだ支援策が提案されている(ただし、その具体化の方向はさだかではない)。ところが、後半の「生活保護制度の見直しに関する論点」の部分では、看過できない重要な問題が含まれている。その問題点を、意見書では以下のように指摘している。

1 生活保護受給者に対して3~6か月経っても就労できない場合に職種・就労場所を広げて就職活動を行うことを基本的考え方とするとの点は,運用次第では職業選択の自由を害するおそれがある。また,「転居を伴う就労に対する積極的支援」と組み合わせての運用次第では,受給者の居住・移転の自由を侵害するおそれがある。

2 稼働能力がありながらその能力に応じた就労活動を行っていないことを理由に保護を廃止するとの点は,受給者の具体的な稼働能力及び就労阻害要因を踏まえた就労の場の存否を度外視しており,判例上確立された稼働能力活用要件の解釈を度外視するものである。
その上,就労活動を行わないことを理由に2度保護を廃止された者について,再々度の申請の際に保護の審査を厳格化するとしている点は,稼働能力活用要件についての本来あるべき慎重な判断が申請ごとになされることなく,申請回数によって形式的に却下決定がなされるという運用につながる危険性が高い。

3 生活保護制度における勤労収入の特別控除について廃止も含めた見直しを検討するとしている点は,憲法で保障された生存権保障の水準を正当な理由なく引き下げることとなり,問題である。

4 健康管理や家計管理を保護受給者の責務とすることを検討するとの点は,本来権利であるはずの自立支援を受給者の義務に転化し,これらを内容とする指導指示違反による保護の停廃止等の不利益変更と結びつけて運用されるおそれがある。

5 嘱託医の判断や医療扶助の受給期間によってセカンド・オピニオンを受給者に指示するとの点は,医療機関の選択及びセカンド・オピニオンを受けることが患者の権利であって義務ではないことを看過するものであり不適切である。

6 不正受給対策の名の下に,保護費の支出の状況を福祉事務所の調査権限の及ぶ事項とするとしている点は,受給者のプライバシーを制限することになるが,その目的と手段との関連性がなく,必要性が認められない。

7 不正受給に係る返還金を本人の同意の下に保護費と調整することを検討するとしている点は,保護費が最低生活費であることから差押禁止とされている趣旨に抵触するおそれがある。

8 扶養義務者への調査権限を拡大し,扶養義務者の回答義務を強化し,かつ,調査対象を過去の受給者及びその扶養義務者にまで拡大している点は,扶養義務者に迷惑が掛かることを恐れる要保護者に事実上生活保護の受給を萎縮させ,餓死事案を生み出すおそれがある。

9 個別の事案に即したきめ細かい自立支援を行うためには専門性を備えたケースワーカーの役割に期待するところが大であるにもかかわらず,現状ではケースワーカーが不足し,その負担が過重となっていることへの対策が示されていない。ケースワーカーの増員及び人件費の全額国庫負担を国の方針として打ち出すべきである。

 そして、日弁連として,厚生労働省に対し,これらの問題点について,最終とりまとめまでに再考の上修正すること,及び,これらの問題点を修正しないまま「生活支援戦略(案)」に沿う法改正案のとりまとめ・提出や通知の発出を行わないことを求めるとしている。
 その理由として、意見書では、「2 生活保護制度をめぐる現状認識の偏り」として、「生活保護受給者数の増加についての評価の偏り」や「受給者・保護費増加の根本的対策は労働政策・社会保障政策の充実によるべきこと」を指摘し、「3 就労支援について」についても、「職業選択の自由・居住・移転の自由の侵害のおそれ」を指摘し、「あるべき支援の方向性」を提示する。さらに、問題となっている「4 就労活動を行っていないとされる者の保護廃止と保護の審査の厳格化について」や医療費の問題、扶養の問題など、全面的に指摘している。もちろんケースワーカーの負担過重についても。

 総選挙後、すぐに動き出す危険性が高い。それだけに、活用してほしい意見書である。

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