公教育の無償性を実現する 教育財政法の再構築
日本の憲法には、26条で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。」とある。これを保障するために、さまざまな法律がつくられるが、この憲法の具体化の過程で、結局は、その教育条件の最低基準とはどういうもので、そのことを確保するために国は財政的措置をどうとるのかを明記した法律がつくられかなったというのが、この本の最初で、そして最大の指摘だ。そして、教育における条件整備のおくれと、私的負担の大きさは、さまざまな運動による改善や前進があったにしても、大きな問題となってきた。とりわけ、新自由主義教育改革は多くの子どもたちと親たちに困難をもたらしている。
そうした戦後史をとくに冒頭の論文では教育財政法史ともいえるような内容で跡付けている。たしかに、教育財政法というのはこれまでまとまった解説書も、専門書もあまりみかけたことはない。だからこそ、とても刺激的で、なるほどとうなさせる。
著者の癖なのだろうが、多分に法解釈の世界に偏りすぎる感じがする冒頭の論文だけど、本全体で、さまざまな分野の運動や政治的な過程がしっかり視野のおさまっている。
そして問題の追及は現在の貧困にまで及んでいく。その結論は人権としての教育だ。教育を受ける権利と、その整備のための国の責任を、憲法と国際法により、確認していく。そこにこそ、いま、メスがいれられるべきだ。
政権交代の際に、社会全体で教育を支えるということが言われ、高校の無償化がはじまった。だけど、その先は、期待はずれ続きだ。なぜ、そうなったのか、教育政策の根本的転換のためには何が必要なのか。そのための答えをこの本はしめしてくれているのだと思う。人権規約13条2bcの留保撤回がおこなわれたいまこそ、よく議論したものである。
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