貧困のなかでおとなになる
著者の中塚さんとはじめてお会いしたのは、たぶん2008年。まだなくそう!子どもの貧困ネットワークができる前、『子どもの貧困白書』も発刊されるまえ、それらの運動の母体になった、子どもの貧困研究会などものの会場に、大阪からかけつけていた。松本伊智朗さんとか、阿部彩さんと初めてお会いしたのもその研究会だったなあ。
中塚さんは、若くて熱心な記者さんだなあという印象。話したことはないけれども、その後も、何度か取材先で見かけている。当時は、大阪で、子どもの無保険が大きな問題になりはじめていて、毎日新聞が最終的にキャンペーンの先頭に立って、法改正にむすびついて、この年の協会賞などをさらったけど、問題のきっかけは、朝日なども報道していた。08年の夏だったろうか、教育のページに上下で大きく子どもの貧困がとりがげられた記事は、よく覚えている。その後、彼女は、いっかんんして子どもの貧困をおいかけて、貧困ジャーナリスト賞なども受賞している。
この本は、その彼女の数年間の仕事のまとめのようなもの。08年当時から、医療や教育現場の記録的なものから、本書ははじまる。それが09年高校入試の問題へと続いていく。このときに国会要請や文科省交渉は、ボクも取材にいったよなあ。そういう告発の筆はさすがだけど、この本を読んでいて、すごいなあと思ったのは、4章、5章の学習支援のところ。そこにいる当事者の思いにしっかりよろそいながら、このとりくみの意義を多角的にうきぼりにしている。「無料学習支援活動は、単なる学力向上ではなく、教育から排除された子や、されそうな子の居場所作りでもあり、長い目で見れば社会からの排除を防ぐ試みだ」。
大津の大学生たち、埼玉の無料学習支援のとりくみ、相模原の篠崎先生、釧路の「冬月荘」、山科醍醐こどものひろば、西成こどもの里、さいたまユースサポートネット、札幌市若者支援総合センター……。ボクも、直接お話をお聞きしたり、また知り合いも少なくはない。そんなとりくみの記事に、お会いした人に思いをはせる。だけど、ここでも、この本には、そこには子どもたちの思いがある。だから6章は、子どもの声だ。
イギリスの記事もおもしろい。親サポートの核心は、「non judgemental」というのは、なるほどと思った。よりそい型の支援とは、結局は、いっしょにいる、ともに生きるということなのだと。
多くのことを学んだ一冊だった。
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