データにもとづいた分析は、やはり結構、おもしろい。そこから導き出される結論もまただなあ。
賃上げで経済活性化を 労働経済白書(東京新聞)
厚生労働省は十四日、二〇一二年版の労働経済白書を発表した。コスト削減のため企業が非正規労働者を増やした結果、低所得世帯の割合が上昇したと指摘。賃金を引き上げて「中間層」を増やすことで個人消費の拡大を促し経済を活性化させるべきだと訴えた。非正規労働者の正社員化を進めることも提言。人への投資を増やすよう企業に求めた。
白書の副題は「分厚い中間層の復活に向けた課題」。白書によると、単身世帯で年収三百万~六百万円、二人以上世帯で五百万~一千万円の中所得世帯の割合は二〇〇九年に48・1%と、一九九九年より2・9ポイント低下。一方、年収がこれより少ない低所得世帯は〇九年で34・1%と、8・6ポイントも上昇した。
白書は「年収分布が低い方へ移っている」と警告。所得減の要因に非正規労働者の増加を挙げ、人件費削減が消費の伸び悩みを招き、成長の足を引っ張った可能性があると指摘した。
企業は貯蓄が投資を上回るカネ余り状態だが、利益が株主への配当金などに回され、賃上げや人材育成に十分活用されていないと批判。「人件費を消費の源泉ととらえ、(働く人への)分配を増やすことが経済活性化に重要」と強調し、分厚い中間層の復活が必要と訴えた。
正社員を希望する非正規労働者を三百五十五万人程度とし、全員を正社員に登用した場合、所得を約十兆円、家計の消費支出を約六兆三千億円押し上げる効果が見込めるとの試算結果を示した。
非正規労働者の約半数は、主要な稼ぎ手として家計を支えていることから「非正規でも一定水準以上の生活ができる社会を目指すべきだ」と指摘し、待遇改善を急ぐべきだと主張した。
白書の実物はここ。
結論として、こういっている。
「バブル崩壊後低成長が続く日本経済においては、企業経営を守るための人件費の削減が、結果としてマクロの所得の減少を通じた消費の伸び悩みにつながり、現在、コストを削減した結果、モノが売れなくなったといういわゆる『合成の誤謬』の状態が続いていると考えられる。
経済は需要面、供給面の両面から捉える必要があるが、同様に、労働者についても、労働力の供給主体であるとともに、消費主体でもあり、両面から捉える必要がある。また、人件費をコストとしてのみ捉えるのではなく、人的資源、あるいは内需の源泉として捉えることも重要である。
社会制度・社会システムは相互が密接につながっている『補完的な』関係にあり、全体として考えていく必要がある。社会の構造変化に対応して、日本において最も重要な資源である人的資源を持続的に有効活用でき、社会の活性化につながるような制度・システムを構築していくべきであり、それが雇用・労働面における全員参加型社会の構築と『ディーセント・ワーク』の実現である。」
人件費の削減による「合成の誤謬」だというのだ。
さらに、日本経済の活性化のためには、「分厚い中間層」の復活が必要であるとして、「①誰もが持続的に働ける全員参加型社会の構築により、人口減少、高齢化の下でも日本の経済社会の活力を維持・向上させること、②企業だけでなく社会全体で非正規雇用者も含めた能力開発を行い、人的資本を蓄積していくこと、③労働者が安心して安全に働き続けられる環境整備を行い、『ディーセント・ワーク』を実現していくことが不可欠である」としている。
現実の政策動向にどう反映されるのだろうか? 民主や自民の総裁選、代表選、維新の会の政策討論でも、この点についての意見を聞いてみたいのはボクだけではないとは思うのだけれども。
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